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□ヒトデナシロマンス
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出会いは最悪だった。
バーで誘い誘われ、即ホテル。
お互い、楽しんだ後に、お互いのおかしな点に気付いた。

「キミもそうだったんだ♠」

「あなたもそうだったのね」

ニヤリと同じ笑みを浮かべて、同じ目的を持っていた二人。
楽しむのは叙事だけではない。
その後のKILLも楽しみの1つ。
しかし、ここで問題が起きた。

「キミ、強いね♣
ボクがこんなに手間どうなんて♥」

「その言葉、そっくり返すわ」

決着が着かない。
いつまで経っても、闘いは平行線をたどった。
結局、二人して容量超過(オーバーヒート)。
その日の晩もホテルに泊まって、昨夜と同じことをした。

念の系統は変化系。
得意なゲームはポーカー。
遊び場は天空闘技場。
趣味はバトル。
そして、快楽殺人鬼。
二人を結びつける共通点は多かった。
だから、3回目の闘い(バトル)で、二人は悟った。

「無理ね」

「無理だね♦」

力は互角。知略も互角。
このまま続けても埒(らち)が明かないのは明白な事実だった。

「キミを殺れそうにない♠」

「あなたを殺せそうにないわ」

お互い大きなため息をついて、肩をすくめた。

「でも、キミのせいで興奮しちゃった♥
ボクはこの後、暇なんだけど、キミはどうかな?」

「奇遇ね。私もなの」

二人して唇に弧を描き、腕を組む。
血塗(まみ)れの男女が仲睦(むつ)まじく歩く様は異様だった。
その日でその時は終わった。

しかし、歪な二人は何かに引き寄せられるかのように出会ってしまう。
そんな時はまた交わり、また闘い、そして、また別れる。

そんなことを繰り返しているうちに、どちらからともなく、「愛してる」と言う言葉を口にし始めた。
不確かで、意味のない音を口にし、信憑性のない絵をメモとして残し始めた。
まるで、新しい遊びを思い付いた子どものように言葉のやり取りを二人は楽しんでいる。

きっとその頃からだろう。
二人が最も楽しんでいたコトが二番目になったのは。
二人が不安定な感情で成り立つこの奇妙な関係に至福を見出だすようになったのは。
だからこそ、クソみたいな言葉が必要になった。

「お互い、結構楽しんでるわよね」

クツクツとナマエが笑う。

「当たり前じゃないか♣
でも、今回はこの辺で終わりにしよう♦」

名残惜しそうにヒソカはナマエの頬に唇を落とした。

「ええ、そうね。
またオーラ切れになるまで闘うと、後に響くもの。
そうなる前にさよなら」

最後に唇を重ね高々とリップ音を鳴らして、ナマエはベッドを出た。

「じゃあ、生きてたら、また」

唇の動きだけで、そう伝え、ナマエは部屋の外へと行った。

飽き性の二人はその時だけの関係を求め、会っては別れるを繰り返した。
歪んだ二人はお互いの歪みに惹かれ、一時繋がる。
常人には理解できない虚無の関係は、甘い感情を孕(はら)み続けている。

――ヒトデナシロマンス――

《お題提供》sans fin - 実在せず続くもの
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