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□蝶と暗殺者
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〜55年前〜

マハ=ゾルディックとゼノ=ゾルディックは、ターゲットを追っていた。

「白髪で紅眼、こいつだね、ジ、ジッちゃん」

ジジイと言いかけて、ゼノ少年は冷や汗を流した。

「まあ、間違いないじゃろ」

手元の資料と眼下を行く一際目立つ人物を見比べて、マハは頷いたが、その心中では嫌な予感が渦巻いていた。

しかし、こやつは例のアレかの…?
やはり、V5が嘘を吐いていたじゃろうか…?
あやつめまた面倒な依頼を持ち込みよって…。

「ジッちゃん、そろそろ行かねえと見失うぜ」

ゼノの声で、マハはハッとした。

いまさら、考えても遅いか…。

マハは小さなため息をついて、孫に「行くか」と告げた。





数日、後をつけるとその人物の行動が全て把握できた。
ターゲットは朝起きると朝食と身支度を済ませ、街の診療所に行く。
次々と訪れる人々に混じって、診療所に入ると、その人物が女であり、医者だということがわかった。
美人ではないが、人を惹き付ける何かを持つその女は、診療と手術、両方をこなす器用な人物であった。
その女性はたまに診療所で泊まることがあったは、高頻度で家に帰りそこで寝ていた。
しかも、家は街の郊外の森にあり、人は滅多に来ない。
だから、2人は家で待ち伏せすることに決めた。





何も知らないターゲットがダルそうに家に帰ってきた。

「あー、疲れた…」

女の香水だろうか。
どこからともなく、桃の甘い匂いが漂ってくる。
女が靴を脱ぐため、いつものように上り口に腰かけた。
マハはそれを確認し、ゼノへと視線を向けた。
この時、ゼノは不思議な感覚に陥っていた。

妙だな…。
この人、そんなに美人でもないのに…どうしようもなく、惹き付けられる…。
甘い香りのせい…?
でも、あの人はターゲット。
暗殺がオレの家業。

ゼノはマハの視線に頷き、物影から飛び出そうとしたその時!

「で、そこのお二人さんは何のご用かな?」

いつものように靴を脱ぎながら、女が言った。

「数日前から人のことつけ回してるところからして、たぶん用事は暗殺。
で、こんな風に見事に気配を絶てる者は"箱"の中にそういない。
って、ことはゾルディック家の人かな?」

靴を揃えた女は立ち上がって、暗い家の中に向かって笑った。

な、なんで…!?
殺られる前に殺るしかない!

焦ったゼノは、マハの制止を振り切り、「これから晩ごはんだけど食べる?」なんて訊いてきた女の懐めがけて、突っ込んだ。

やった!

いつも通りの心臓を抉るあの感覚。
手には女の心臓。
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