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□隣への課題
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その晩遅くにイルミは帰宅した。
本来なら半日で済む仕事だったが、ターゲットの居場所が情報と"著しく"異なっていたために、こんな時間になってしまった。

ったく、ミルキのやつ…。
偽の情報を掴まされて、こっちにもとばっちりが…。

しかも、今日と言う日に限って、こんな事が起こってしまった。

今日はナマエが来る日なのに…。

顔は無表情。だけど、足だけは正直で、倍速で動いている。
急ピッチで山を登り、玄関のドアを引き抜かんばかりの勢いで開けた。

「おかえり〜。お邪魔してるよ」

エントランスに置かれてあるソファで、見慣れない黒髪の女がくつろいでいた。

「お前、誰?」

「はあ!!!?マジ!!!?」

無表情のまま首を傾げると、女は口をあんぐり開けた。

「マジで誰かわかってない?」

「うん。だからさ、お前何者?」

そう言うと、「そっかあ…」と女はがっくりと頭を落とした。
どうやら、向こうはこっちを知っているようだ。

そりゃあ、裏の世界じゃ有名だけど…。

「オレを待ってたってことは新規の客?
オレ、これから忙しいんだけど…」

スタスタと横を通ろうとしたら、女に腕を掴まれる。

「何?」

怪訝に思うが顔には出さず、見下ろすと、笑顔の女にデコピンをされた。
さらに怪訝に思うが、女の笑顔は変わらない。

「確かに、あんたの前では常に白い髪で紅い瞳だったわよ。
だけど、世話係をやってた私がわからないなんてね〜」

「ひどくない?」とニヤリと笑う女。
その仕草、笑顔への既知感、そして、女の言葉からイルミは、あり得ないと思いつつもある名前を呼んだ。

「ナマエ…?」

「せいかーい!」

ピッと人差し指を立てた女に、イルミは目を見開いた。
黒い髪に瞳。
白い肌はジャポンに住んでいる人たちのような色になり、甘い桃の香りもない。

「時差ボケで寝れなくて、イルミを待ってた」

背伸びをして、イルミの頭をよしよしと撫でるナマエ。
その仕草にムッとしながらも、イルミは甘んじて撫でられる。
なぜなら、それは心地良く、ミルキへの怒りも忘れるほど。

「お仕事お疲れ様です。ご飯食べる?」

優しい声音に「うん」と頷くと、ナマエは慣れた足取りで食事室へと向かう。

ああ、ナマエが帰ってきた。

イルミはその後ろ姿をナマエと確信しつつ、その後を追った。
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