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□dye or be dyed?
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ニヤニヤと笑いながら近付いてくる2人組に、カリナの顔は恐怖でひきつる。

関わらなくて正解…。

ナマエはやれやれと肩をすくめ、帰路に戻ろうと3人に背をむけた。

ところが、その3人から5mほど離れた時。

「だって、あの子10万も引き下ろしてたのよ!」

苦し気紛れに吐いた嘘だとしたら、最悪だ。
いや、見られていたのかもしれない。
どちらにしろカリナのその叫びで男2人の視線がナマエを捉える。
カリナの声で危険を察知したナマエは、家と家の間の狭い隙間に飛び込んだ。

「あっ!待ちやがれ!」

男の太い声を背に遊びなれた家の隙間をジグザグに進むナマエ。
目指すは昔からある廃工場。
今、人の少ない通りに出たら、必ず見つかる。
そんなことは小学生の時のケイドロで経験済みだ。
そして、その時に見つけた工場内に通じる穴は、今も健在だろう。

足音を立てずに走るのは案外難しい。
だから、ナマエは歩いた。
男たちの足音と声を耳に息を殺して歩いた。

脳をフル回転させ、隠れられるポイント思い出しながら、ナマエは廃工場を目指す。
10年以上変わらないこの町は、今も昔も隠れる時はナマエの味方だった。





男2人は観念するどころか、応援を呼んである種の捜索隊が結成された頃には、ナマエは廃工場に着いていた。
友達にも内緒の子どもの頃の秘密基地は、あの頃、廃材で作ったドア(と言うよりかは目隠し)がちゃんと残っていた。
ナマエはドアを退けて中に入った。
が、その先を考えていなかった。

自宅とは反対方向の廃工場。
外に出る勇気も、相手が「ギブ」を言う希望も持てなかった。
「急遽(きゅうきょ)、友達の家に泊まることになりました」と、とにかく親に連絡を入れる。
静かな空間に話し声はまずいので、警察に通報する気もなくなり、スマホをカバンに入れ、はあと大きなため息を吐いた。

なんで、こんな事に巻き込まれたのかな…?
こんな風になるなら、先輩にお金、貸してあげればよかったな。
ああでも、そうしたら金ヅルになるのがオチか…。

外の人がいつ諦めてくれるかわからないので、一晩泊まる覚悟を決める。

確か、壁が割れてどこかに隙間があったはず…。
あそこに隠れりゃ、見つからないでしょ。

壁の割れ目は小さく、カバンを持ったままでは入れなかった。
ナマエはカバンを肩から降ろし、先に割れ目に入れる。
そして、自分も入った。
壁と壁の隙間は意外と広く、四つん這いになってなら奥へと進めそうなので、ハイハイで奥へと行く。
入ってきた割れ目がギリギリ見える位置で膝を抱えた。
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