Anniversary

□Lonely Christmas!?
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予想図が12月上旬に差し掛かった頃、目覚ましのアラームが鳴った。

「あー、もう、こんな時間か…。
結局、徹夜しちゃった」

アラームをとめて、「うーん」と伸びをする。

ネテロんとこまで、かなり距離あるから、風呂入ったら即出発ね…。

あくびを漏らして席をたち、ナマエは風呂へと足を向けた。

「動きやすい服、用意しといて」

暗闇に染まった空間へとそう言うと、「了解しました」と機械じみた声が返ってきて、ロボットが2台出てくる。
1台は音を立てて2階へ、もう1台はナマエの後をついてきた。

ナマエは電気をつける。
パッと辺りが照らされ、散乱している本が露わになった。

そろそろ片付けなきゃ、まずいわね。

ナマエは小さく苦笑して、たまたま目に入った本を1冊手にとった。
それは自分自身に関する本だった。
パラパラとページをめくり、ため息をつく。

一体、いつになったら、お迎えが来るのやら…。

ナマエは遺伝子操作によって生み出された生物兵器。
歪な新種のため、寿命がいつくるか、それ以前に寿命があるのかさえ誰にもわからない。
ナマエの愛する人はもう随分前に他界している。
その後を追いたくて、何度も自分に刃を突き立てた。
しかし、体は死ぬことを許さなかった。
ナマエは悠久とも言える時を過ごしていた。
退屈で虚しい時を。

物思いにふけりながらめくっていると、とうとう最後のページにたどり着いた。
そこには『二極化は可能か?』という走り書きがあった。
これは何十年も前に自分が書き込んだものだ。

ナマエは真面目な顔をしてそのページを見た。

やってみようか…。

ナマエは決意を固めて、その本を閉じた。
再び歩き始める。
上のジャージを脱ぎ、後ろに放り投げる。
後をついてくるロボットがそれをキャッチする。
Tシャツ、ブラジャーと次々に脱いでは放り投げる。
全部脱ぎ終わった時には風呂に着いていた。

ドアを開けて中に入って、シャワーのバルブをひねる。
水が勢いよく飛び出した。
その冷たさに慌てて飛び退く。
やがて、水はお湯に変わった。

まず、頭を洗い、次に体、顔。
それから湯船に体を沈めた。
体の芯に温かさが届き、眠気がナマエを襲う。

徹夜後の風呂ってこんなに眠くなるっけ?
寝てしまいそう…。
でも、デートすっぽかしたら可哀想よね…。

後ろ髪を引かれながら、ナマエは湯船から出た。
風呂のドアを開けると、冷気がナマエの体を包み込んだ。
ぼんやりとしていた意識をこの場に留めるかのように、ナマエの肌を冷気が突き刺す。
ナマエは用意されてあった服を着て、コートを羽織った。
マフラーを巻き、手袋をした上でコートのポケットに手を突っ込んでしっかり防寒する。

廊下を歩くと冷気が足を蝕む。
玄関に到着すると、冷えきった足をブーツに突っ込んだ。
そして、ドアを開けると家の中とは比べものにならない冷気がナマエを襲った。
身を震わせながら、何とか自家用ジェットに乗り込む。
後はコンピュータに任せて、ナマエは眠りについた。
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