Anniversary

□年越しカオス
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"蜘蛛"こと幻影旅団には、毎年、大晦日になると訪れる家がある。
その家の主ナマエは"預かり屋"をしている。
食料品から武器まで、ありとあらゆる物を預かっている。
幻影旅団も買い手がつくまで盗品を預かってもらっている。

あまり集まりのよくないヒソカもこのイベントには毎年ちゃんと参加している。
集合ポイントにはもうほとんど全員がそろっていた。
みんな、普段着ている服ではなく、カジュアルな服装をしている。
久しぶりの顔合わせなので、団員は話に花を咲かせていた。
団長はケータイで誰かと話をしている。

「遅かったじゃねーか、マチ」

ノブナガが少し遅れて来たマチに声をかけた。

「仕事があってね。
そいつを片付けてた」

「それはご苦労なこった」

ノブナガが慰労の言葉を言った時に、団長ことクロロが声を発した。

「全員そろったようだな。
ナマエ、こっちは準備OKだ」

相手にそう伝えて、クロロは電話を切った。
すると。

「寒ー!!やっぱ、外は寒いね」

女の声が聞こえて、ヒソカは後ろを振り返った。
ヒソカの肩に届くか届かないかぐらいの身長の赤いちゃんちゃんこを羽織った女。
風で髪が乱れ、顔はよく見えないがこの登場の仕方はナマエだ。

「やあ、久しぶりだね、ナマエ♠
元気だったかい?」

ナマエは顔にかかった髪を除けてヒソカを見上げた。

「ううん、ダメ。死ぬ。寒くて死ねる」

ナマエは背を丸めてガタガタ震えながら、みんなの真ん中へと移動する。

「部屋着のまま来るからね」

フェイタンは呆れた目でナマエを見た。

「着替えんの面倒だったの。
あー、寒。早く帰ろう…」

そう言うとナマエはすくっと背筋を伸ばして「ギミック発動」と唱えた。
ナマエからオーラが放出され、旅団を丸ごと包み込む。
景色が白一色に変わったかと思うと、どこかの玄関になった。
左手には靴箱がある。
どこからかいい匂いが漂ってきた。

「あー、寒。
みんな、靴脱いであがってね」

そう言って、ナマエは靴を脱いで、ドアの中へと入っていった。

「おじゃまします」

と、団員たちも次々と靴を脱いで、部屋へと入っていく。
ヒソカも靴を脱いで、開けっ放しのドアの中へと入る。
2つのこたつが見えた。
その上にはグツグツと煮たった鍋が2つ。
奥の台所には追加の具材が並んでいる。
そのさらに奥では、団員たちの騒ぎ声が聞こえる。
早い者勝ちがここのルール。
そして、手を洗う順番=どこに座るか決める順番が成り立つので、テレビに近い位置(ウボォーギンとフランクリンは強制的に遠い位置、シズクとコルトピは優先的に近い位置)や鍋に近い位置に座るために、みんな我先に手を洗おうとするので、洗面所は大混乱だ。
静かに観戦するのは、マチやパクノダぐらいだ。

ナマエは1人鍋を見つめて、灰汁をすくい出している。

「ドア閉めて、寒い」

ナマエが困った顔して、ヒソカを見る。

「ああ、ごめん♣」

ヒソカはドアを閉めて、ナマエの隣に座った。

「手は?」

「いつものお願い♦」

「もう…仕方ないな…」

にこりと笑ってお願いするヒソカに、ナマエは苦笑して、「ギミック発動」と唱えた。
すると、ヒソカの手の上にアルコール除菌のボトルが現れた。

「ありがとう♠」

手を除菌し終えて、ヒソカはお礼を言う。

「みんなには内緒だよ」

ナマエはいたずらな笑みを浮かべ、ヒソカに口止めをする。

「わかってるよ♥」

ヒソカが頷いた時には、もうボトルはなかった。
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