Anniversary

□What did he forget?
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それから、しばらく経ってヒソカは目を覚ました。
電気がつけられたままの玄関に1人残されたヒソカは、何があったのか考えを巡らせながら立ち上がった。

「っ…!」

殴られた所がズキズキと疼く。

咄嗟にオーラを纏えたから良かったけど、まともに食らってたら肋(あばら)アウトだったよ♠
ホントにナマエは美味しそうだ♥

ヒソカは軋む体を支えながら、リビングへと向かった。
電気がつけられたままの部屋に入ると、微かにいい匂いが台所から漂ってくる。
とりあえず、充電が切れたスマホを充電する。

台所に行ってみると、作りかけの料理が放置されてあった。
一体何がしたかったのか全くわからない。
また、なぜ自分が殴られたのかもわからない。
のどが渇いていたので、冷蔵庫を開けると、ふっと甘い匂いが鼻をかすめた。
目に飛び込んできた画像。
そこにあるのは、チョコレートでコーティングされたケーキだった。
その上には"Happy Valentine!"と書かれた飾りが。

その途端に朝の場景が脳裏に浮かんだ。

「今日は早く帰って来てね」

ニコニコと笑うナマエの顔。
声は楽しそうに弾んでいる。

「今日は何かあるのかな?」

ヒソカが笑うと、その笑みは悪戯なモノへと変わる。

「帰って来てからのお楽しみ」

「じゃあ、今日は早く帰るよ♣」

「約束だよ?」

「うん、約束♦」

ヒソカは笑顔のナマエにキスをして、部屋を出た。

やってしまったと、後悔の念がヒソカを襲う。
よく見れば、料理は放置されてのではなく、自分がシャワーを浴びる間に仕上げて、あがったタイミングで食べれるよう考えた上で置いてあるように思える。

いつもと違った雰囲気に何かあるとは思っていた。
どれだけ楽しみにしていたかは、朝のナマエから見て取れる。

そこに自分は何をした…?
約束を忘れて遊んでいた挙げ句、血塗れで帰る。
そんなことをした自分は…。

ボクはナマエに殴られて、当然だね…♠

鳩尾(みぞおち)を擦りながら、ヒソカは小さく息をついた。

その時、リビングの方から着信音が聞こえてきた。
ナマエからの連絡かもしれない。
そう思ったヒソカは慌ててリビングへと向かった。

電気が少し貯まれば、電源がONになる設定がされてあるソレの着信ランプがピカピカと光っている。
メールのアプリを開けると着信が6件。
4件がナマエから、最新の着信2件はマチからだ。

ナマエからは早く帰って来るようにだろう。
しかし、マチは何の用だろうか?

ナマエとマチは親友♣
もしかしたら…♦

ヒソカはナマエのメールを無視して、マチのメールを見る。
古い方は添付ファイルだけのメールだった。
ヒソカは添付ファイルを開けた。
そこには酔い潰れて机に突っ伏したナマエの写真があった。
目元に涙を浮かべたナマエは原形を留めていないビールの缶を握ったまま寝ている。

もう1つのメールを見てみる。

――――――――――――――――――――
From:マチ
Sub:(not title)      2015 2/15 0:48
――――――――――――――――――――

のろけとしか思えない愚痴が
鬱陶しくてね、酒で沈めたよ
ナマエはあたしの部屋で
寝てるから回収に来い

1時間以内に来なければ…
クロロに同じメールを送る

P.S.
気絶していたからなんて言い訳が
通用すると思うな

――――――――――――――――――――

時計は1時36分を指している。
ヒソカは慌てて部屋を飛び出した。
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