Anniversary

□怪異の3月3日
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外に出ると、ヘリコプターとコンテナがそれぞれ、2つずつあった。

「ほえー…。誰の仕業…?」

「シャルと私」

ヘリコプターという珍しい物に目を奪われてボケッーとしたナマエの呟きにシズクが答える。

「私のデメちゃんで雪と壊れた家を吸い込んで」

「オレがパイロットを操作してヘリを連れてきたってわけさ」

何やら箱を持ったシャルナークがシズクの後に続いて説明した。

「じゃあ、帰りはヘリってこと?ラッキー♪」

嬉しそうにはしゃぎながら、ナマエは持っていたお宝をコンテナに詰め込む作業に取りかかった。






「これで終わりね」

最後にフェイタンとノブナガが雛人形を入れて、コンテナを閉じた。

「ヘリ〜ヘリ〜♪ん…?」

ヘリへと向かうナマエの足に、何かが当たった。
視線を下に向けると、あの女雛が落ちていた。

「ったく、あの2人ったら…。
こらー!フェイ、ノブナガ!!!」

ナマエは女雛を拾い上げて、最後に雛人形を取り扱った2人の名前を大声で呼んだ。

「騒がしいね…」

「何だよ!?」

もうずでに、ヘリに乗り込んだ2人がひょっこりと顔を出した。

「丁重に扱って!って、言ったでしょ!?
女雛が落ちてるじゃない!!
壊れたらどうするのよ!!」

プンスカと怒るナマエに、2人は不思議な顔をした。

「オレたちがコンテナに乗せた時には、ちゃんと一番上の段にあったぜ?」

「そうね、ちゃんとあたね」

2人は口を揃えて、ちゃんとあったと言うが、

「そうなの?なんか嘘っぽい…」

と、ヒソカと付き合っている弊害か、ナマエは最近疑い深くなった。
しかし、2人の表情は変わらず真剣で嘘を吐いているようには見えない。
うーんと、首を傾げていると、クロロの声が飛んできた。

「ナマエ、そろそろ出発するぞ」

「はーい」

返事をするものの、ナマエの心にはまだ靄(もや)がかかっている。
手元の女雛を見ながら、ナマエはヘリに乗った。





アジトに着いてすぐ、旅団はコンテナからお宝を取り出し、ズラリと並べる。
その中の一部が欠けた雛壇に、ナマエは女雛を戻した。

「これでよし」

ナマエは満足げに頷き、クロロと同じように離れた位置からお宝の山を見た。

「今回も大量だな」

クロロが嬉しそうに頷いたと、同時にポンッ!と景気の良い音が鳴った。

「みんな、呑もうぜ!」

酒瓶を手にフィンクスがニコニコと笑う。
その後ろから、カシャンカシャンと陶器が擦れる音ともに、苦笑を湛(たた)えたノブナガが出てきた。

「お前、器のこと忘れてねーか?」

「たまには、気が利くなあ」

ニカッと笑ったフィンクスに「たまにかよ」と、ノブナガは渋い面持ちだ。
ノブナガの持ったお猪口(ちょこ)やグラスが入った箱から、みんな、思い思いの器を選ぶ。

「ナマエ、呑まないのか?」

酒盛りの器を選ばないナマエに、マチは不思議そうな顔をした。
ナマエはそこそこの呑めるので、こういう酒盛りは好きで必ず参加するのだが、この時は違った。

「うん、呑まないよ。
お雛様も元通りにしたし、今日はすぐ帰るってヒソカに言ったから」

はにかむナマエの口からヒソカの名前が出た途端、団員たちが呆れを混ぜながら嫌そうな顔する。

「最近、付き合い悪いぞ!」

ノブナガが唇を尖らせると、ナマエはニコリと笑った。

「彼氏との時間の方が大事なんで。
じゃあ、また!」

ナマエは最後に雛人形を一瞥して、颯爽(さっそう)と駆けて行った。
その時には、全ての人形が雛壇の上にあった…。
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