Anniversary
□張り切りました!
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手洗いを済ませてから、席に着いて、ナマエの料理に手をつける。
「ところで、誕生日プレゼントは何がいい?」
「ここまで準備しておいて、それは考えてなかったのかい?」
用意周到な手料理と飾り付けの中で、一点の抜け落ち。
「考えてはみたんだけど…。
私ってさ、オシャレとかからは程遠いタイプの人間だから、服とかアクセサリー関係はダメ。
トランプでも買おうと思ったんだけど、味気ないよなあ〜ってなって…。
結局、何も買わず仕舞い。
でも、プレゼントはあげたいから、リクエストを訊こうと思ったわけ」
ナイフと皿を壊さないように、力を加減しながら、ナマエは答えた。
「…そのプレゼントって何でもいいのかい?」
「私ができることなら、何でも」
真正面のヒソカにニッと笑う。
「そうだね…♠キミとのバトルなんてどうかな?」
ニヤリと口角を上げたヒソカの瞳には欲情が映る。
「ん、いいんじゃない?」
口に肉を含んだナマエの答えにヒソカはまた驚いた。
「どうしたの?」
その表情を見たナマエが首を傾げる。
「こうもあっさり肯定されるとは思ってなかっただけだよ♣」
「え、だって、ヒソカと私ならお互いが死なない程度に闘(や)りあうのは簡単でしょ?
そろそろお金がヤバいんだよね〜。
だから、天空闘技場で金儲けしたい」
ビシッと指を立てたナマエ。
闘技場内で闘えば、2つの目的を達成できる。
「OK♥キミにしちゃあ、合理的だ♦」
「たまには、頭を使わなきゃね♪」
得意気に笑うナマエは、闘技場は初心者。
だが、旅団(クモ)の補助団員。
最短日数で200階まで登ってくるだろう。
「闘技場は楽しい?」
「たまに、かな?
戦闘のメッカと言えど、美味しい果実とはたまにしか出会えないからね♠」
その美味しい果実を思い出して、ヒソカは目を細める。
「と、言うことは私でも200階は余裕ってわけか…」
テーブルの上はすっかり空っぽ。
残すは冷蔵庫の中のデザートだけになった。
ナマエはドヤ顔でケーキを持ってきた。
「今年はフルーツタルトでーす!」
飾り付け同様、色とりどりのフルーツが乗ったタルトをヒソカの目の前に置いた。
が、包丁を持つ手がふるふるしている。
その柄は原型を留めていない。
お皿を割らないように…。
机を壊さないように…。
真剣な眼差しのナマエがスローモーションで入刀しようとするので、ヒソカが助け船を出した。
「ボクがやるよ♥」
「だい、じょうぶ…。
…………………………たぶん」
間を置いての「たぶん」が怖い。
しかし、ナマエのやる気を削ぐのも可哀想だ。
結局、ヒソカは固唾を飲んで見守ることを選んだ。
ケーキを食べれたのは、そこからおよそ10分後。
そして、ナマエの苦労の後を見つけたのは、それから1時間後。
台所の端にまとめられたゴミ。
その中には、割れたまな板や元が何かわからないほどみじんになった野菜があった。
オーラの調節に苦労したのだと思うと微笑ましいし、自分のためにその苦労を負ったと思うと嬉しかった。
そんなわけで、上機嫌なヒソカの猛攻で疲れた果ていたにも関わらず、睡眠をガッツリ削られたのは言うまでもない。