Clapping

□Crimson Crimson Crimson
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一面、真っ赤に染まった大理石の床。
そこに響くコツコツという複数の足音。

「呆気ねーなあ!」

1つだけ異なる足音でウボォーギンが大声で笑う。

「これなら、あという間ね」

フェイタンはつまらなさそうに肩をすくめた。

「おい!いたぞ!あいつらだ!」

また、奥から警備員たちが現れる。
ニヤリと笑って走り出したウボォーギンの隣を何かが過ぎ去って、目の前の警備員をバラバラにした。

その人物にウボォーギンは不満げだ。

「おい!ヒソカ!オレにも置いておけよ!」

ゴムの反動で列の先頭に来たヒソカは先程のウボォーギンのように笑う。

「早い者勝ち、だろ?」

全身に血を浴び、深紅に染まった奇術師はまたゴムの反動を使って、奥に消えて行った。
その後をドスドスと追いかけるウボォーギンに残りの団員はやれやれと肩をすくめる。





辺りを深紅に染めながら、奇術師は思った。
飛び散る肉片を綺麗だと、人に死を与えるのは楽しいと。

「クックックッ、アッーハッハッハッ♠」

笑いが止まらない。
呆気なく消えていく命が滑稽(こっけい)過ぎて。
迸(ほとばし)る悲鳴と断末魔の合間に、意地悪な奇術師(マジシャン)の笑い声が不吉にこだました。

警備員と一般人を殺しながら、気が付くと1人で奥に来てしまったようだ。
ここがどこかはよくわからない。
警備員と思われる死体をあさり、タブレット端末を見つける。

美術館に入ってから、30分ほど。
別行動していたシャルナークとマチはもう監視センターに着いただろう。
タブレットを使って、監視センターに連絡を入れてみる。

返事はすぐに来た。
どうやら、他の団員は目的地に近いようで、早く合流するようにとの事。
やれやれと足を指示されたルートに向ける。

その時、何かが鼻をかすめた。
血に混じって微かに甘い匂いが漂ってくる。
何の匂いかまではわからない。
何せ、全身血まみれで鉄の臭いが強すぎるのだ。
ふと足元を見ると、品の良い女性の骸(むくろ)が横たわっていた。
そこから漂っている甘い匂い。
たぶん、彼女の香水だろう。
そして、その匂いはナマエと食べたケーキを思い出させた。

こんな時に余計な事を思い出して、ヒソカは苦笑を漏らした。
深紅の床を歩きながら、真っ赤になったナマエの顔を仕舞う。

なぜなら、彼女はこんな自分をきっと嫌うだろうから。
極々普通の、何の強さも美しさも持たない、ましてや、こんな事をするはずもないナマエに惚れたのは、今みたいに深紅に染まっていた日だった。
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