幻惑の蝶

□Episode2
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「ああ、もう、いい!論より証拠!」

弁明することを諦めたサブリナは、鞄からスマートフォンを取り出した。
そして、ゾルディック家に電話をかけた。

『こちら、ゾルディック家執事室です。
どちら様ですか?』

無機質な声でゴトーが応える。

「私!今すぐ、ゼノ出さないと、ククルーマウンテンごとその屋敷ぶっ飛ばす!」

凄まじい勢いで、まくし立てるサブリナに、キルアとゴン、ゴトーが怯む。

『わ、わかりました。少しお待ち下さい』

待機メロディが流れて数秒。

『わしじゃ、ゼノじゃ。
お主、わしに電話をかけてくるとは、イルミの嫁になる決心をしてくれたんじゃな…!』

嫁という言葉に反応したサブリナは、呆れ口調で言う。

「んな、わけあるか、バーカ。
それより、キルアの誤解をといて」

そこまで言って、キルアに電話を渡す。(半ば強制的に)

「もしもし、じっちゃん?」

『わしじゃ、キルア』

ゴンがキルアの隣で耳をそばだてている。
サブリナはその様子を不機嫌丸出しで見ていた。

「本当にじっちゃん?」

電話の相手はこう言った。

『左の太ももじゃったかの?
お前が産まれた時からある痣の位置は…』

それを聞いたキルアは相手をゼノだと確信したと同時に驚きもした。

じゃあ、アイツがじっちゃんの友達だって言うのは…!

キルアはそのことをゼノに確かめた。

『ああ、確かじゃ。
のう、キルア、サブリナの傍にいるのなら、イルミの嫁になるように頼んでくれんか?』

その頼みにキルアは目を丸くする。

「えっ…!?」

そして、普段は出さないであろう驚きの声がもれる。

「ねえねえ、キルア、どうしたの?」

キルアの珍しい表情にゴンが尋ねる。

「じっちゃんがアイツをイルミの嫁にって…」

キルアがサブリナを指差して言う。
どんな会話をするか、想像がついていたサブリナは、口だけ「イヤだ」と動かした。

「サブリナはイヤだってよ…」

『うーむ、あやつの戦闘能力はわしやシルバの遥か上を行く。
あやつが嫁に来てくれれば、我がゾルディック家は安泰なのにのお…。
そうじゃ!キルア、あやつを口説け!』

またもや、理解不能な頼み事にキルアは固まってしまった。
様子を見かねたサブリナは、スマートフォンを取り上げる。

「お電話代わりました、サブリナです。
あまりにも、嫁の誘いが続くようなら、本気でククルーマウンテンぶっ飛ばすんで、覚悟しておいて下さい」

有無を言わさず、そう告げると電話をきった。

「で、信じる気になった?」

笑顔のサブリナにキルアは、ただ首を縦に振るしかできなかった。
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