幻惑の蝶
□Episode5
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コンコン
静まりかえった部屋にノックが響く。
「空いてるからどうぞ」
ページをめくりながら、サブリナは言った。
ドアはゆっくりと開く。
「こんばんは」
「お邪魔しまーす」
来訪者の声はゴンとキルアの声だった。
「どうしたの?」
ドアに向かって、声を投げたが、視線はずっと本に向かっている。
「うん、ちょっとしつ、ってうわあ!!?」
「なっ!!!?」
ゴンとキルアがかなり驚いた声をあげて、絶句する。
「ん?どうかした?」
依然として、本から顔を上げない。
「ふ、服!」
「ちゃんと服、着ろ!!」
あたふたと慌てながら、ゴンとキルアが訴える。
サブリナは2人が来てから、初めて本から視線を外した。
そして、自分の姿を確認する。
バスローブがはだけて、半分ずり落ちている。
「ああ、これ?
気にしないで」
そして、再び本に視線を戻す。
「お前が気にしなくても、こっちが気にするわ!!」
キルアがすさまじい勢いでつっこむ。
「えー、面倒なんだけど…」
ぶつくさ言いながら、ページをめくる。
「ボクはこのままの方がいいかなあ♥」
壁にもたれたヒソカが言う。
全員がヒソカを驚きの目で見た。
「なんで、お前がいるのよ!!?」
窓枠から飛び降りて、サブリナが叫ぶ。
飛び降りた衝撃でバスローブが完全に落ちる。
ゴンとキルアは慌てて目に手をあてる。
「いいねえ♠」と、ヒソカは目を細めて笑った。
サブリナは大急ぎで落ちたローブを着直し、本をテーブルの上に置いた。
「で、一体全体、何の用?」
顔を真っ赤にして、サブリナはキルアとゴンに訊ねた。
その表情を見て、ヒソカがまた笑う。
「あんたのことについて知りたい」
キルアが真っ直ぐ、サブリナを見る。
「いいよ。その前に…」
ヒソカに歩み寄る。
「出てってくれるとありがたいだけど」
口だけで笑って言うとヒソカに笑顔で返された。
「追い出したかったら、力尽くでどうぞ♠」
サブリナの瞳に強い光が灯る。
「サブリナ…そんな目で見ないでよ…♣
興奮しちゃうじゃないか♦」
部屋中にヒソカとサブリナの殺気が入り交じり、キルアとゴンは表情をかたくする。
部屋中に緊張が走るなか、サブリナは「あっそ、じゃあやめる」と言った。
傍を離れようとしたサブリナの腕をヒソカは掴んだ。
「どうしてやめるんだい?
ボクはキミと遊びたい♠
キミもボクと遊びたい♥
そこにどんな不満があるのかな?」
苛立ちを隠す様子もなく、サブリナにぶつける。
「あんたは私に付きまとってイラつかせ、あんたと戦うようと仕向けてる。
だから、私はその手に乗りたくないだけ。
いつどこで戦うかは私が決める。
あんたじゃない」