a lethal dose of toxicant

□a drop
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私が泊まっているモーテルに着くや否や、ヒソカはため息をついた。

「キミはよくこんな所に泊まれるね♠」

「一晩泊まるだけだから、別にどうってことない」

ベッドに簡易なキッチンとシャワールーム。
私の持ってきた荷物以外、何のアメニティもない部屋。
私は着ていた黒のコートを脱いで、椅子に引っ掛けた。
ヒソカはキッチンの戸棚を開けて、顔をしかめる。

「調理器具すらないじゃないか…♣」

「鍋とナイフはあるよ」

私は鞄から鍋を取り出して、掲げた。

「キミ、料理する気ないでしょ♦」

料理することを諦めたヒソカはベッドに座って、呆れた視線を私に向ける。

「ビールとツマミがあれば平気だからね」

私は備え付けられている小さな冷蔵庫に入れてあったビールとツマミのサラミを取り出して、ベッド脇のサイドテーブルに置いた。
ビールのプルタブを開けて、一口呷(あお)ってから、私はYシャツとズボンを脱いで、コートと同じように椅子にかけた。
タンクトップとパンツ姿で、ヒソカの隣に腰を下ろして、サラミに手を伸ばす。

「シャワーは浴びないのかい?」

不思議そうな顔をしたヒソカがこちらを見ている。

「シャワーが壊れてて使えない」

私はそう答えてビールを呷った。

「体を洗ってあげようと思ったに、残念♠」

クツクツとヒソカがのどで笑った。

「御愁傷様。ヒソカもいる?」

サラミの皿をヒソカに差し出すと、ヒソカはニヤリと笑って言った。

「もらおうかな♣キミの口移しで♥」

私は小さくため息をついて、サラミをくわえた。
そして、それをヒソカの口へと運ぶ。
ヒソカは私からサラミを受け取って、口の中に入れると、私の唇を舌でなぞった。

「これはなかなか美味しいね♦」

そう言いながら、今度は皿からサラミを取った。
どうやら、本気で気に入ったようだ。

「ツマミは良いのを選んでるからね」

私は笑って、ビールに手を伸ばした。

「ところで、ハクレン♠」

「何?」

ビールを呷りかけた手をとめて、私はヒソカを見た。

「眠るように死ぬ毒ってあるかい?」

ヒソカはニコニコ笑いながら、私を見た。

「あるけど…何する気?」

「キミが毒を作る所をじっくり見る気♥」

そう耳元で囁いて、私の頬にキスをした。
そして、催促と好奇の視線を私に向ける。

「わかった」

私はベッドから下りて、鞄を手に取り、中から小瓶を取り出す。
そこに水を入れて、ヒソカの隣に戻った。
それから、小瓶の水に意識を集中させる。
やがて、中の水が黒くなった。

私の念能力live or die【天使と悪魔の涙】。
ヒソカのオーラがガムとゴムなら、私のオーラは薬と毒。
生を与える薬にするか、死を導く毒にするかは私次第。
効果によっては代償を負うものもあるが大抵は代償なしで作れる。
私は小瓶に栓をして、鞄にしまった。

「ボクにくれないのかい?」

ヒソカは少し驚いた顔をして、私を見た。

「なんで?」

「記念だよ♣」

にこりと笑ってヒソカは手を出し、頂戴の仕草をする。

「色は数分で消えるから、後で水と間違いないようにね」

注意を言ってから、ヒソカの手に小瓶を乗せた。

「うーん、綺麗な黒だねえ♦」

ヒソカはそれを電灯に光にかざして、眺めている。
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