a lethal dose of toxicant

□two drops
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ハクレンに驚かせれたのは、それで二度目だった。

買い物を済ませ、帰ってきたボクは部屋に1歩入った途端、転けた。
意味がわからず驚いたその一瞬の隙に、上に何かが乗っかり、冷たい感触がのどに当った。
顔を上げると、ハクレンが乗っていた。
その瞳は微かに揺れてはいるが、確かにあの瞳だ。

「目的は何?」

ナイフをボクののどに当て、問いかけてくるハクレン。
熱に犯され、声に張りがない。
包帯には所々血がにじんでいる。
膝でボクの腕を押さえているが、彼女の力と重さじゃ、押さえている意味がない。

「ボクの目的?それは…」

ボクが少し腕を動かした途端、ナイフがきつくのどに押し当てられる。

「動けば切る」

ハクレンの瞳がより一層煌めく。

「ダメだよ♠女の子がそんな物振り回しちゃ♣」

ボクはニッコリ笑いかけたが、ハクレンの表情は固いままだ。

「目的は?」

チクリと小さな痛みがのどに走る。

「ククククク♦
聞き分けのない子だなあ♥」

ボクが上体を起こすと、ハクレンは呆気なく転げ落ちた。
落としたナイフに伸びたハクレンの腕を押さえ、バンジーガム【伸縮自在の愛】でその両腕と床を張り付ける。
そして、今度はボクがハクレンの上に乗った。
全身に傷を負ったハクレンが悲鳴をあげる。

「ゴメン、痛かったね♠
でも、ボクも自分の身は大事だからね♣」

ボクは膝立ちになって、ハクレンの負担を減らす。
ボクが頬に触れると、思いっきり睨み付けてきた。
それが面白くてたまらない。

「離せ」

「キミが大人しくするなら、離すよ♦
だけど、キミはそうしないだろ?」

ボクがそう言うと、ハクレンは笑った。
その笑顔は何とも整った笑顔だった。
まるで、人形のような…。

「そうね。きっと、私は大人しくしない…」

そう呟いて、ハクレンは体の力を抜いた。
何かを思ったのか、急に瞳から光が消える。

「どうしたの?」

ボクが頬に触れても、睨み付けもしない。
ただ虚ろな、あの瞳とは正反対の瞳がボクを見た。

「悟っただけ。
今、行動しても無意味だと。
あなたは大人の男で力だけじゃ勝てないことは明白。
その上、私は傷だらけで熱もある。
完璧に勝てない」

「だから、もういい」と消え入りそうな声で呟くハクレンは、彼女自身の状態に相応しい顔になった。
肩で息をし、額には汗がにじんでいる。

「キミは賢いね♠」

彼女の瞳からあの激しさが消えたのは残念だったけど、利口な子は助かる。
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