a lethal dose of toxicant

□three drops
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ハクレンがバスルームへ入ってしばらく経ったけど、まだ出てこない。
心配になって、声をかけようとした時、ドアが開いた。
さっきとは見違えるほど、可愛くなったハクレンが出てきた。

「うん、よく似合う♥」

「包帯、丸見えだけどね」

ボクの言葉にはにかむことなく、ハクレンは肩をすくめた。
確かに首や足に痛々しい包帯が覗いている。

「それなら、大丈夫♦そこに座って♠」

にこりと笑うと、ハクレンは不思議な顔をしながら、ソファに座った。
ハクレンの前に膝をついて、ボクはオーラを指先に集中させ、ハクレンに巻いた包帯に触れた。
触れた包帯が肌の色になっていく。

「すごい…!」

ハクレンの顔に驚きの色がくっきり現れた。

「どうやってるの?」

好奇の目がボクを見つめる。

うーん、良い目だねえ♥

ボクはニッコリ笑って答えた。

「これはドッキリテクスチャー【薄っぺらな嘘】と言って、念能力の一種だよ♣」

「念能力?」

首を傾げるハクレンは歳相応の表情になっている。

「そう、念能力♦
ハクレンはボクがキミを生かした理由、覚えてるかい?」

ハクレンは首を縦に振って、苦笑した。

「覚えてるよ。
私を強くして、戦うんでしょ?」

「その通り♠
ボクがキミとのバトルに満足できるよう、キミには念能力は修得してもらう♣」

「…………できそうにない気がする」

急に難しい顔になったハクレンが不安げに呟いた。

「大丈夫、ボクがちゃんと教えてあげるから♥」

「嫌な予感しかしない…」

俯いたハクレンの首まわりにも、ドッキリテクスチャー【薄っぺらな嘘】を施した。
次にふくらはぎに施し、そして、太ももに手を伸ばした。

ボクの手を避けながら、ハクレンは言う。

「そこはいい。スカートで隠れるから」

「でも、少し出てるよ?」

ボクが首を傾げて、手を伸ばすと、「いい、いらない」とハクレンがまた逃げた。

「どうして?」

ボクがそう訊くと、ハクレンは小さなため息をついた。

「…そこ、口紅ついてる」

抑揚のない声で答えながら、ハクレンはボクの首筋を指す。
指摘された所を触ると、手に赤い色がついた。

「ちなみに、昨日は頬っぺについてた。
しかも、今日の色とは別の色のが」

平然と言い放って、「理解できた?」と、ハクレンは首を傾げた。

「よくわかったよ♦」

「なら、よかった」と、ソファを降りようとしたハクレンの腕を掴んで、抱き締めた。

「ちょっ!?何?」

上擦った声にボクは思わず笑みがこぼした。

「ハクレンが嫉妬してたことが♠」

「あー、説明足りなかったみたい。
不特定多数の女と寝てる不誠実且つ不衛生な人に触られたくないってのが理由。
そう言うことだから、離して」

かなり呆れた声が返ってきた。
間を少し開けて、ハクレンの顔を見ると、侮蔑の目がボクを睨んでいる。

「つれないねえ♣」

速く離れたいのか空いた隙間に腕を入れて、突っ張るハクレン。

「無駄な抵抗が可愛いね♥」

そう言うと、物凄い顔をされた。

「ククククク♦そんな顔しないでよ♠」

「自惚れもいいとこ。さっさと離せ」

「もうちょっとだけ♣」

ボクはそう言って、スカートの手を入れた。
ハクレンの体が小さく波打つ。

「感度いいね♥」

「100回死ね」

黒々とした感情をまとった言葉を放つハクレンの感触を楽しみながら、ドッキリテクスチャー【薄っぺらな嘘】を太ももの包帯に施す。

「はい、終わり♦」

ボクがパッと手を離すと、腕を突っ張っていたハクレンは後ろのソファで頭を打った。

「強情なキミが悪い♠」

クスクス笑うと、鬼のような形相でハクレンがボクを睨んでくる。

「そんな恐い顔しないでよ♣」

「させたのはそっち」

「ところで、靴はどうしたんだい?」

「あんな高いヒール、履いても歩けないからバスルームに置いてきた」

「まったく、キミって子は…♦」

ボクは肩をすくめて、バスルームに行った。
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