パラレルワールドから来た図鑑所有者
□鮮やかな緑、色付く葉
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……と、まあとりあえず博士の頼みごとを終えて、改めてこっちに飛ばされてしまった仲間と
帰る方法を探すためにマサラタウンを出て知っているようで知らないカントーを旅することになったレッド。
ただいま、カントー最大の森、トキワの森を通過しようとしているレッドは………
「ピカチュウ〜。」
「ピカ、ピッカー。」
ピカチュウと共に森で絶賛癒され中である。
平行世界と言えど、ピカチュウの故郷であるので、ピカチュウがはしゃぐのは当然だ。
そしてピカチュウがはしゃぐ姿につられるように、顔ではわからないが彼自身もいつものテンションの倍ぐらいにははしゃいでいる。
「…………………(パシャパシャッ!パシャッ!)。」
そんなピカチュウに癒されながら、何枚も………いや、
何十枚も写真を撮っていた。
日ごろ、かの某こっちの世界のジムリーダー曰く「ピカ厨」なレッドにとってはこんな行動は当たり前。ピカチュウもどちらかといえば撮られることが好きではないが大好きなレッドのためなら何でもできるので、どっちにとっても悪くないことだ。
「………グリーン、リーフ、探さなきゃ。」
レッドはご自分のピカチュウに癒されていたら、すっかり本来の目的を忘れてしまっていた。
「……………行こう、ピカチュウ。」
まだ撮りたりないなと、細々とした声で呟くと少し残念そうに立ち上がった。ピカチュウもレッドの言葉に反応して、彼の後についていく。
考えることも、やるべきこともいっぱいある。
いつ帰れるかはわからないが、今はやるべきことをやろう。
勿論、好きなことをするのも忘れずに。
「あ、レッドじゃねーか!」
トキワの森を進んでいくと、先日別れたばかりの少年がいた。
ずいぶん早い再会だが、次の町にいくにはここを通る必要がある。
むしろ、ここまでの道で一緒にいかなかったのが不思議なくらいなのだ。
「君は僕と同じレッド君……………。」
「…………名前がな。あ、あと服もおなじだな!」
「……………何しに来たの?」
挨拶らしきものを終えると、早速本題へ入った。
いや、まあだいたい目的はわかっているが、一応だ。そもそも自分にとって関係ないからそんなこと聞く必要もないが。
「ああ。ここを渡るついでに仲間を増やそうかと思ってな。レッドは?」
……仲間、か。彼の愛すべきピカチュウもここでバトルして捕まえた。ここは比較的捕まえやすいタイプのむしタイプの宝庫だ。仲間を捕まえるにはうってつけの場所だろう。
「…………友人探しに来た。」
「そっか!なあ、しばらくだけど一緒に行かないか?お前の友達探すの手伝うよ!」
平行世界のレッドの誘いにレッドはしばらくしてコクリ、と頷いた。
理由としては、単純に二人の方が見つけやすいから、自分にそっくりな平行世界のレッドをみて結構ビビりなあのグリーンの驚く顔が見たいからだ。
「よろしくな!レッド!」
今のレッドにはもうない、輝かしいばかりの笑顔で差し出す手をしばらく見つめ、やがて答えるようにギュッと握った。
そうしてこうして20分後
「まてー!」
平行世界のレッドはキャタピーを捕まえるのに苦戦をしていた。
(……あれ?キャタピー捕まえるのに、
かれこれ10分以上かかっているよね?
………もうすぐ15分か。
…………平行世界の僕ってこんなに捕まえるの下手だっけ?)
確か、キャタピーはカントー地方のポケモンの中でもかなり捕まえやすいポケモンだ。
トレーナーのレベルが上がれば開幕スーパーボールで捕まえられるくらいには。
「くそーっ、どこいったんだ?
あの青虫ヤロウ……。」
挙句の果てには、見失ってしまった。
レッドは平行世界の自分とキャタピーの鬼ごっこには飽きてしまったらしく、ピカチュウと一緒にマサラタウンを出るときにもらったサンドイッチを食べ始めている。
しかし、彼の返事に答えるようにすぐにガサガサ、と草むらが揺れたのだ。
そんな大きな変化を見逃す平行世界のレッドではない。すぐにそちらに目を向けた。
「お、あそこだな。
いけっ、ニョロゾ!」
ニョロゾは指示通り、草むらに飛び込んだ。
ただ一人、レッドは直感的に感じていた。
……あの草むらの揺れ方は確実にキャタピーではない、と。
ううん、むしろ……あれは野生のポケモンか?少し揺れが大げさなような気がする。もしかして、おびき寄せているのか?
彼の考えも知らず、草むらに入っていったニョロゾ。そして、案の定先に倒れてしまったのは………
「ええっ!?
ニョロゾ!」
平行世界のレッドのニョロゾだった。
「飼い主つきか……」
草むらの方から、声が聞こえた。
レッドにとってずっとずっと昔。まだ、ライバルと競い合って、強くなることが楽しかったあの時代に聞いた声だ。
そこにいるのが誰なのか軽く予想をして声の方へ振り向くと、そこにはヒトカゲと……
「野生のポケモンだけかと思って攻撃しちまったぜ。」
あの、自称イケメンジムリーダーである彼にそっくりな、
いや、平行世界のグリーンがいたのだ。
「悪く思うなよ。」
彼はレッドには目もくれず、倒れているニョロゾと平行世界のレッドに嫌味のように言った。
「こ、このヤロー!!
よくも!」
自分よりだいぶ沸点の低い平行世界のレッドにはだいぶカチンときたのだろう。彼に向かって殴りかかるが、
「おっと!!」
その手は身のこなしの早い平行世界のグリーンによって簡単におさえられてしまった。
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