*K 中編*

□もしも猿比古が吸血鬼だったら
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満月の夜は外には出ないこと。



良いわね?



美人と言えば誰もが頷くであろうその美貌。



いや。



美人等と安い言葉は彼女には似つかわしくない。



しかし、それ以上の言葉を知らない者達は美人だ。としか言えないのだろう。



それほどまでに彼女は美しかった。



―――どうして?



まだ言葉を覚えたばかりと言う舌っ足らずな声が彼女に問いかける。



良いから。私との約束を守ってね。




―――うん!比古良い子だからお母様との約束守る!



この名前を聞いたとき、ん?と思うものが多数いたはずだ。



何故なら、幼いとはいえ声は少女特有な甲高い声だったからだ。




良い子ね。私の可愛い可愛い比古。



これが最後の会話になるだなんてこの時の2人はまだ知らなっ方。









それから数百年後…



「たく。満月何て嫌いだ。」



あの時の少女は10代後半程の可憐な少女に成長していた。



「はあぁ。どんだけ飲んでもお腹一杯にならないし、喉も乾いたし。誰かいないかなぁ?」



ひとり寂しく呟く。



「あ?こんなとこでガキが何してやがんだ?」



唐突に聞こえた声に驚きもせずに



「あんたこそ。赤の王がこんなとこに何の用だ?」



「それよりもお前、腹減ってんのか?」



何処の文脈からそれよりもになるんだよ



「そーだけどー?」



「ついてくるか?」



あぁー。



普通の人間だと思われてるってわけね。



「喰わせてくれんの?」



「食べたいならな」



ニッコリと微笑む。



一瞬で目の前に立てば少しだけ動揺したように空気が揺れる。



(いつ動いたのか分からなかった!?)



「あぁ。美味しそう。・・・頂きます。」



周防尊の首筋に牙を突きたてれば芳醇な香りの血が鼻腔を満たす。



あぁ。



美味しい。



もっと。もっと。もっと。



「欲しい。」



夢中で気がつかなかった。



相手の事を。



獰猛に笑っていたことを。



首筋に鋭い痛みが走ったのはその直ぐ後だった。

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