☆ Short Storys ☆

□友達からはじめよう〈完結〉
2ページ/5ページ



「あのさ、船長…
 オイラ、別に貸切じゃなくてもいいよ。
 あの人、一緒に乗せてあげてよ。」


『えっ、いいのかい?
 おーちゃんだって久々なのに…』


「うん、別に、釣ってる時は、
 関係ないから、いいよ。」


『悪いね…
 じゃぁあとでまかないサービスするから。』


「んふふ… 頼むよ!」



まかないサービスはちょっとお得感あるし、
それに実際、この船にオイラ一人ってのも勿体ない話だよな。



船長が事情を説明し終わると、
女の人はオイラの所に来て


『あの…
 わがまま言ったみたいになって
 すみません。』


「あ、いやいや、別にいいから…
 それより、時間長めで船出したいんだけど、
 大丈夫かな?」


『はい、全然構いません。
 そちらの都合に合わせますので。』


「じゃぁ、よろしく!」


『本当にありがとうございます。』


女の人はペコペコと頭をさげて、うれしそうに笑った。


オイラは軽く手を挙げて、船に乗り込んだ。




本当に久々な感じがする。


大物が釣れるのに越したことはないけど、
別に釣れなくてもこの潮風と海の匂いに触れられるだけでも満足なんだ。


ハワイで買ってきたルアーを使って糸を垂れる。


船の揺れに身をまかせて、のんびりと引きを待つ。




しばらくすると、さっきの女の人が近寄ってきて


『あのぉ… 本当にすみませんでした。
 嵐の大野さんとは気付かずに…
 図々しくて、ほんっとごめんなさい!』


「へっ? あぁ…。
 意外と気づかれないんだよね。」


『せっかくのお休みなのに、
 私なんかがお邪魔しちゃって、
 お詫びのしようもありませんっ!』


「もう、気にしなくていいからさ。
 釣り、楽しみなよ!」


『あ、ありがとうございます!!』


またペコペコと頭を下げて、元いた場所に戻っていった。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ