☆ Long Storys ☆

□ゼブラで見つけた〈連載中〉
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3. 似合わないでしょ


〜バーでは〜


「あれ…… カコちゃん…
 さっきの彼、もう帰しちゃったの?」


マスターが灰皿を取り替えながら、声をかけた。



「いいのよ。
 アタシには似合わないでしょ?」


「そうかい?
 一生懸命、話かけてたじゃない…」


「マスター気付かなかったの?
 彼のこと…」


「えっ? なんのことだい?」


「じゃ、いいわ。」



マスターは、その後はもう話しかけてこなかった。





街で声かけた時は、まさかねって思った。

よく似た子だと思った。


珍しくダテめがねなんかかけちゃって、
ちょっとおしゃれにしてたから。



だけど、お店に入って、近くで見たら本物で…

息が止まるほどびっくりした。



ずっと何年もTVの中の彼を追いかけてた。



その彼を目の前にして、ファンだなんて名乗れるほど、若くない。

そして、きれいじゃない。



アタシは、動揺を気付かれないようにしてた。


逆に変なテンションになってしまって、嫌われたかもしれない。




『俺、大野って言います。
 絶対また来るから!』


でも、彼は、自分から名乗って、
そして……また来るって言った。




どうしよう… 夢か、ドッキリに違いない。

こんなのって絶対ありえないもの。


正直、また会えたらうれしいに決まってる。


けど、アタシなんかと関わらない方がいいに決まってる。




しばらくお店に来ない方がいい。

「マスター、おかわり!」


だけど、あんなことがあった傷心の今日だけは、
もうちょっと…、もうちょっとだけ…、
ゆっくり飲んでいたい……


飲んでみんな忘れちゃいたい。

 
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