☆ Long Storys ☆
□魔王アナザーストーリー〈完結〉
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1. しおりさんのコーヒー
【ドラマ第3話の続き】
領としおり、空ちゃんを送ったあと、
2人でカフェの前まで歩いてくる。
「あの・・・
よかったら中でコーヒーでも・・・」
「いえ・・・もう遅いですから
今日はここで・・・」
彼女のさびしそうな顔に心が揺らいだ。
「・・・じゃぁ、1杯だけ・・」
「ほんとですか!」
「ええ・・」
僕の返事で、途端に表情が明るくなった。
あまり関わらないようにしないと・・
そう思いながらも
彼女の顔を見ていると、つい負けてしまう。
♪カランコロン
「あれっ・・えりさん・・
もう寝ちゃったのかな・・
成瀬さんにとびっきりおいしいのを
入れてもらおうと思ったのに。」
「しおりさんのコーヒーでお願いします。」
「・・えっ?」
少し驚いた後、頬をほんのり赤くして、
彼女はにっこり笑ってみせた。
「じゃぁ、成瀬さんは
ここに座って待っててくださいね。」
背中を押されるように、席についた。
彼女はカウンターの向こうへ行って、
コーヒーの豆を選び始めた。
「私も最近はコーヒー上手に入れられるように
なったんですよ!」
今度は豆を挽きながら、話している。
飾らない笑顔が暖かい。
僕の心の奥底の冷たいところを溶かしてくれる。
できることならこの笑顔をこのまま見ていたい。
僕の復讐のために、この笑顔を曇らせたくない。