☆ Long Storys ☆

□08 LOVE(出会い編)〈完結〉
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●First Story「隣人」




同窓会の帰り道。

「はぁ…」とため息をもらす。



みんなきれいだったな……

それに比べて私、地味だし、

さえないメガネのせいもあるかな……

あんまり声かけてもらえなかったな……。

気分はちょっと落ちていた。



アパートの階段を上がりかけて、
階段の段の隙間から暗がりで人影が動いた。


カツッ!


階段をふみはずしてその場にしゃがみ込んだ。


「いたっ…」


「大丈夫ですか?
 俺がおどかしちゃったかな」


キャップをかぶった若い細身の男の人だった。



「大丈夫です…… 
 あっ 痛い」


「怪我したんじゃない?」


「……どう しよぅ」


「病院行こう。
 鍵とってくっから。」


「えっ…?」



彼はどうも隣の住人みたいだ。


顔をあわせたこともなく、
人が住んでいるのさえも感じられない部屋だった。



「お待たせ。乗れるかな」


自転車をおしてきた。



車じゃないんだ…と
ふと思った。


その心を読んだかのように


「ごめん、免許持ってないんだ。
 取りたいんだけどさ」


「いえ… でも本当に大丈夫ですから」


見ず知らずの男の人の自転車に二人乗り?

そんなことできない。



うつむいて黙っていると


「だめだよ。
 そのままにできないから。」



彼は私の手をグイっとひっぱった。



しかたなく、自転車の荷台に腰をかけた。



「ちゃんとつかまっててよ」


彼のパーカーの裾をにぎってみた。


「そんなんじゃ落っこちちゃうよ。
 ほら!」


自分の腰に手を回させた。


「あ……  はい。」



かすかに
潮の匂いとコロンの香りがした。


私は
自分の頬が
ほんのりとあつくなるのを感じた。

 
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