☆ Long Storys ☆

□魔王アナザーストーリー〈完結〉
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僕は・・・彼女を好きなのかもしれない。

いや、すでに好きなんだと思う。

その気持ちを否定しなければいけない自分がいる。

行き場のない感情をどうするべきか悩んでいた。



「できましたよ・・・」


そう言いながら1杯のコーヒーを運んできた。


「いただきます。」


僕が飲む姿を、
彼女の目が追っているのがわかる。


「とてもおいしいです。」

「・・・あぁ よかったぁ。」


またこの笑顔だ。


「そうだ!
 今朝焼いたシフォンケーキがあるんです。」


彼女はカウンターの向こうに歩いていく。

その足取りは軽いスキップのような感じだ。


「しおりさん 気を使わないでください。
 コーヒーだけで十分ですから・・・」


もう一口、コーヒーを口に運ぶ。

本当においしい。心地よい香りだ。


「いたっ!」


声の方に目をやると、
彼女が指をみつめている。


「どうしたんです?」

「私ったらドジですね・・・もう!
 成瀬さんの前で失敗しちゃうなんて・・・」


泣きそうな顔をしている。


「しおりさん・・・血が・・」

「あっ平気です! こんなの・・」

「だめですよ。見せてください・・」


引っ込めようとする彼女の手をつかんだ。

左手の薬指から血がにじんでいる。

とっさにその指の血を口でぬぐった。

 
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