☆ Long Storys ☆

□いつになったら〈完結〉
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♪ポツッ…


頬に冷たいものを感じて目を開けると、
さっきまで射していたお日様はどこに隠れたのか…
空は薄暗い雲で覆われていた。



「ヤベッ…降ってきやがった!」


こんな時、自分の雨男ぶりを実感する。




隣のベンチでは、
オイラと変わらない年頃の女の人が、
キャンバスに筆を走らせていた。


ポツポツと降り始めているのに、まだ描いている。


オイラは木の下に移って、少し様子を見ていた。


…が、雨音が急に激しくなった。


女の人は慌てて絵の具や筆をバックにしまい始めた。

だけど慌てるとうまくできないのが、人の常だ。

筆洗いをひっくり返し、キャッと声をあげた。


見てらんねぇなぁ…



「早くしないと濡れちまうよっ。」



そう言って、
オイラは腰に巻いていたシャツをキャンバスにかぶせた。


「えっ?」

女の人は驚いて、盛り上がっている木の根っこに足を取られた。


後ろに倒れそうになるところを、間一髪で腕を掴んだ。


「あっぶないなぁ…
 ほら早く荷物持って!」


オイラはキャンバスとイーゼルを抱えて木の下へ走った。


彼女もバックに道具を詰め込んで走ってきた。



「すみません…
 なんか、手伝ってもらってしまって…」


「いや…いいけど……」


と言いながら、彼女の顔を見た。


「んふふっ…」


「………?」


オイラは吹き出しそうになるのを抑えて下を向いた。


「何かおかしいですか?」


「だって、その、鼻の下!」


鼻の下にちょび髭状に絵の具がついている。

よくあるコントみたいだ。


「やだぁ…」


彼女は、ポケットからハンカチを出して夢中でこすっている。


「はい、これ。たぶんセーフだと思うけど。」


オイラは運んだキャンバスを差し出した。


「プッ… それ…!」


急に笑いながら、オイラに向かって指差した。


「えっ、何?」


「子供がケチャップかソース、
 たらしたみたい…」


「マジでっ?」


オイラのTシャツには
赤茶色の絵の具がべっちょり付いていた。


「…って笑ってちゃダメですよね。
 ごめんなさい、私のせいで。
 うち、すぐそこなんで、着替えてください。
 弟のだけど、よかったら…」


「あ、あぁ、ありがと。」

 
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