☆ Long Storys ☆
□いつになったら〈完結〉
3ページ/22ページ
♪ポツッ…
頬に冷たいものを感じて目を開けると、
さっきまで射していたお日様はどこに隠れたのか…
空は薄暗い雲で覆われていた。
「ヤベッ…降ってきやがった!」
こんな時、自分の雨男ぶりを実感する。
隣のベンチでは、
オイラと変わらない年頃の女の人が、
キャンバスに筆を走らせていた。
ポツポツと降り始めているのに、まだ描いている。
オイラは木の下に移って、少し様子を見ていた。
…が、雨音が急に激しくなった。
女の人は慌てて絵の具や筆をバックにしまい始めた。
だけど慌てるとうまくできないのが、人の常だ。
筆洗いをひっくり返し、キャッと声をあげた。
見てらんねぇなぁ…
「早くしないと濡れちまうよっ。」
そう言って、
オイラは腰に巻いていたシャツをキャンバスにかぶせた。
「えっ?」
女の人は驚いて、盛り上がっている木の根っこに足を取られた。
後ろに倒れそうになるところを、間一髪で腕を掴んだ。
「あっぶないなぁ…
ほら早く荷物持って!」
オイラはキャンバスとイーゼルを抱えて木の下へ走った。
彼女もバックに道具を詰め込んで走ってきた。
「すみません…
なんか、手伝ってもらってしまって…」
「いや…いいけど……」
と言いながら、彼女の顔を見た。
「んふふっ…」
「………?」
オイラは吹き出しそうになるのを抑えて下を向いた。
「何かおかしいですか?」
「だって、その、鼻の下!」
鼻の下にちょび髭状に絵の具がついている。
よくあるコントみたいだ。
「やだぁ…」
彼女は、ポケットからハンカチを出して夢中でこすっている。
「はい、これ。たぶんセーフだと思うけど。」
オイラは運んだキャンバスを差し出した。
「プッ… それ…!」
急に笑いながら、オイラに向かって指差した。
「えっ、何?」
「子供がケチャップかソース、
たらしたみたい…」
「マジでっ?」
オイラのTシャツには
赤茶色の絵の具がべっちょり付いていた。
「…って笑ってちゃダメですよね。
ごめんなさい、私のせいで。
うち、すぐそこなんで、着替えてください。
弟のだけど、よかったら…」
「あ、あぁ、ありがと。」