☆ Long Storys ☆

□ゼブラで見つけた〈連載中〉
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1. 負けてないオンナ



目の前の信号が点滅を始めた。

別に急いでるわけでもないから、
のんびりとそこで足を止めた。

点滅の中、急いでゼブラを駆け抜ける人たち。


みんな忙しいんだなぁ……




「どこ見てんだ このアマ!」



んん…? 何だ?


凄みを効かせた怒鳴り声がする。



「そっちこそどこ見てんのよ!」


啖呵をきる女の声も。


すげぇな…負けてないぞあの人…




視線の先にいるのは、いかにも悪そうな若い男と、
キャリアウーマン風のスーツ姿の30代の女性。


タイマン張ってるみたいな睨み合いの後、
男はチッと舌を鳴らし、雑踏の中に消えてった。


女の人はというと、その後、へなへなと道端に座り込んだ。




やっぱ女なんだな…ふぅ…


なんだかちょっと、ほっとした気分。




「ちょっとアナタ!
 今笑ったでしょ!!」


「えっ? 俺?」


「そう、そこのアナタ!!」



女の人は、すくっと立ち上がり、オイラのほうへ向かってくる。


やめてくれよ。
とばっちりだろ、これ。



「いやいや、俺、笑ってないですから…」


「いいえ、確かに笑ったわ!」


「まいったなぁ……
 んじゃぁ、すいません。」



こんなところでトラブルも困る。

そういう風に見えたんなら、とりあえず謝っとけばいいか。



「うん。素直でよろしい。」


「いや… どうも……」


「アナタ、お詫びのしるしに
 一杯付き合いなさい!」


「えっ?」


「こっちこっち!」


オイラの返事も聞かずに歩き出す。




ちょっと待ってくれよ………ったく。



「早くー!」


すたすたと3メートルくらい進んでから、振り返って手招きする。



訳わかんなくて、仕方なくついていくと、
オイラの顔を覗き込んで言った。



「アナタさー、きれいな顔してるわね。」


「そ、そうっすか?」


「アタシねー、アナタみたいな子、
 連れて歩きたかったんだよねー!」



そして今度は、腕組みしてきた。



「えぇぇ…?」


なんだよこの人、酔っぱらってんのかぁ?

さっきケンカしてたとは思えない。

オイラのことも全然気づいていないみだいだ。


鼻歌まじりで超機嫌がいい。


オイラの腕を引っ張り気味に歩く。




「さっ着いた! ここよ!」


5分ほど歩くと、路地裏にあるバーに着いた。



「あのぉ……
 1杯だけで勘弁してくださいよ…」

 
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