☆ Long Storys ☆

□ゼブラで見つけた〈連載中〉
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2. コロコロ変わる



腕を組まれて逃げようがなく、
オイラはあきらめて1杯だけ付き合うことにして店に入った。


4人掛けのテーブルが3つと、
カウンターに5席ほどの小さな店だ。




「マスター! いつものやつね!」

そう言いながら、カウンターの一番奥に座った。


「いらっしゃい… カコちゃん。」

白い顎ヒゲをたくわえた年配のマスターが返事をする。




「ほら、早くここ座りな!」

隣のいすを手でポンポン叩いて急かしている。


「彼氏は? 何にするかい?」


「あぁ… じゃ、俺はビールで。」


注文しながら、隣に座った。



「いい? 吸っても…」


「あぁ、どうぞ。」


彼女はタバコに火をつけて、
ふぅ〜と煙を吐き出した。




少しの沈黙のあと、こっちを見ずにしゃべり始めた。


「ここさぁ、いつも一人でくるのよね…
 なんか落ち着くんだ、こうしてると。」


「はぁ……」




マスターがグラスを目の前に並べた。


オイラはツバが後ろに来るようにキャップを被り直して、
グラスを持ち上げた。


「はい、かんぱ〜い!」


彼女はグラスをカチンと鳴らした。


「あ、か、かん…ぱい…」



とまどうオイラの顔をじーっと見つめてたかと思うと、
急に視線をそらした。


そして一口飲んで、グラスを明りにかざして言った。



「このエメラルドオーシャンってさぁ…
 きれいな色でしょ?
 涼しげですごく澄んでてキラキラしてて…
 でね、味はさっぱりしてるの。」


「ふぅーん。」


「おいし……うん。
 やっぱりこうでなくちゃダメよね…」



そうつぶやいて、ふぅーと大きく息を吐いた。

 
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