☆ Long Storys ☆

□ゼブラで見つけた〈連載中〉
4ページ/11ページ


その後はまた沈黙が続いた。



初対面の女の人となんて、なに話したらいいんだ?

考えてみても思いつかない。



ふと、オイラは、さっきの横断歩道での風景を思い出した。


隣をちらっとみると、
グラスを握りしめたまま、上を向いて目をつむっている。



「あのぉ…。
 カコさん…っていったっけ?」


「へっ?
 あ… なに?」


振り向きながら、薬指で目じりをぬぐったように見えた。



あれ…? 涙?



「あ… あのさっきの…
 あんまりとんがらない方がいいんじゃない?
 手出されたら勝てないでしょ。
 危ねぇし…。」


「………」


「あのさ……
 なんかイヤなこととか、あったわけ?」




そこまで言うと、オイラの言葉を遮るように


「ごめんなさい、無理に付き合わせて。
 もういいよ、帰って…」


静かに笑って、そう言った。



最初に店へ引っ張ってきたときのテンションとは、うって変わってさびしい表情だった。


なんか気になる。



けど、ただの通りすがりじゃないか…

「これ、俺の分…」


それ以上オイラが踏み込むことじゃないか。

ポケットから千円札を出してカウンターに置いた。



「いいよ、アタシがおごるから。」


声のトーンがまた上がって、笑っている。



「じゃ、あの…
 またこの店に来てもいいかな…?」


「だーめ。
 ここは、アタシの隠れ家だから……」


今度は冷たい返事だ。



「え、だめっすか?」


「うそ!!」


「げっ、ひでぇな!」


オイラの反応をみて、笑ってる。

コロコロと変わるな……この人。



「俺、大野って言います。
 絶対また来るから!」



彼女はまたタバコに火をつけながら、

「バイバイ!」

と軽く手を振った。




オイラは店を出て、
また雑踏にまぎれて歩きだした。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ