夢の町
□2…不気味
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ガラガラ
やっぱり、なんか気味悪い場所。さっきの部屋もそうだったけど、電灯はチカチカと切れ掛かっているし人気はないし。
「はっ?」
「宮地先輩、どうしたんですか?」
「外の景色がおかしい。」
「外?」
私はずっと廊下を見てたけど宮地先輩は外の景色も見てたのか。
そんなことを思いながら大坪先輩とは反対の窓を覗き込む。
周りには建物も木もなにもかもが見当たらず、この建物はだだっ広い砂漠の真ん中にあるようだった。
空は暗く、落ちかけているのか昇ってきているのか、月がここからまっすぐあるところに見える。
「確かに違和感はありますね。」
「外には広がった土以外何もなく、唯一見えるものといえば満月ぐらいだからな。」
私が言った後、大坪先輩がそう言った。
「そうですね。たしかに見えるのが月だけって不気味d…」
…えっ?
思考が、一瞬止まった。
「大坪先輩、さっきなんて言いましたか。」
「ん?外には満月と土以外何もないなって言ったぞ。」
「うそ…」
先輩の言う通りなら、ありえないことが起こっている。
「どうしたんすか、先輩?」
「ありえないのだよ…」
「小西と緑間は気づいたか。」
緑間くんは私の隣の窓を見ていたから、大坪先輩の言っていることに気づいたのだろう。
「大坪先輩が言っていることから考えれば、」
「月が、二つあることになるのだよ。」
「「「はっ?」」」
大坪先輩側の窓を見ていた人にはわからないみたいだ。
「大坪先輩は、さっきのぞいた窓から満月が見えたんですよね。」
「あ、ああ。」
「どうな風に見えたんですか。」
私と緑間くんが交互に問う。
「窓から見て、水平線上に真っ直ぐと見えたな。」
「そうですか。」
やっぱり、宮地先輩が言いたかったことはこれだ。
「実は、俺たちの窓からも満月が見えたのだよ。」
「しかも、先輩と同じように水平線上に真っ直ぐと。」
「つまり、先輩が俺たちが見た月を見ることは位置的に無理なのだよ。」
「けれど、先輩に月が見えたってことは…」
「月が二つあると考えられるのだよ。」
こんなこと、非現実的だ。だけど、先輩たちが見間違えたとかどちらかの月が偽物とかじゃない限り、そうなってしまう。
「ああ、緑間たちの言っている通り、月が二つあるみてぇだ。俺は、外の景色を交互に見てたらそのことに気がついてな。」
月が二つあるなんて、やっぱりこの建物は、いやこの世界はどこかおかしい。