世界はいつも残酷で…【カネキ寄り】

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「ん………。」
いつの間に眠っていたのだろうか。ソファーで寝ていた白髪の男,金木研は静かに目を覚ました。身体を起こすと自身にタオルケットが掛かっていて,寝る前まで読んでいたはずの“高槻泉”の小説が机に置いてある事に気付く。周りを見渡すと自分以外部屋にいなく,夜の静けさが部屋を漂わせていた。壁に掛けられた時計に目を遣ると針はちょうど夜中の0:00を指している。
…ヒナミちゃんか万丈さんかな?
タオルケットを見てそう考えた彼は少し頬を緩める。そして「さてさて…」と言うと伸びを一つしてソファーから立ち上がり自室へと足を向けた。

自室のドアを開けたカネキはクローゼットを開けると奥の方に閉まってある戦闘服に着替え始めた。

『アオギリ戦』終了後,カネキの周りの環境もカネキ自身も色々と変貌した。黒かった髪の毛は白髪に変わり,自分を“喰種”と認めたカネキは,働いていた喫茶店『あんていく』から辞め,トーカや芳村店長,ニシキたちから離れ,現在は万丈や月山たちと共に行動をし,このアジトで暮らしている。

“この世界は間違っている。”

何がそうさせているのか答えを見つける為,そして強くなる為にカネキは今までの道を逸れたのだ。
そしてあの事件依頼,アオギリの連中や他の敵の喰種が外を徘徊していることが増えている。
“これ以上誰かが傷つくのは見たくない”
“僕が守らなきゃ。”
仲間思いの彼はいつも皆が寝静まった頃に一人外を見廻るのが日課となっていた。

着替え終わったカネキは,机の上にあるマスクを付けると「…今日は何も起こらないといいな。」と呟き,自室を後にし玄関へと足を運ぶ。
玄関に着くと少し肌寒い空気が漂っていた。カネキは扉の前に立ちドアノブに手を掛ける。
…情報も何か集まれば楽なんだけどな。月山さんばっか頼っててもアレだし…。…まあ,とりあえず…

カネキは人差し指をパキッと鳴らすと
「…行ってきます。」
そう言い残し,扉を開け暗闇の中へと消えて行った……。
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