コート上の天使

□光と影
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セッターは奥深く、チームの柱、司令塔。


このポジションに誇りを持っていたし、勝つために努力してきた。



だけど…いつからだろう。迷いがでたのは。


チームで一番多くボールを触ること、トスを上げることが怖くなったのは。


自身がなくなったのは…。








中総体、中学三年間の成果を発揮する大会。

負けたら即引退。


市民体育館には色とりどりのユニフォームで賑わっていた。




『北川第一、北川第一…あ、あった。ん?


…雪ヶ丘、ってどこ?』


聞き覚えのない学校名。でもあいつはどこだろうと真面目すぎるくらいに本気でやるんだろうな…




公式WUがもうすぐ始まるというタイミング。
体育館から聞こえる声は活気に溢れていた。



試合のコートはどこだろうとうろうろしてたら、トイレ付近の水道でよく見るジャージの集団を見つけた。



『あ、ねえ』

「おおおおおお腹痛い…っ!!!!」

『ひっ』



どんっ



急に現れたオレンジ頭にタックルされ、私は軽く吹っ飛んだ。


「ごごごごごめん!大丈夫?!」

『な、なんとか…。君こそ大丈夫?』

「ふぁふ!あっ、いいえ、はいっっ!」

『…ほんとに大丈夫?』



かっちーんとか、ボンっとかいろいろ音出てるけど、、、



「あれって焼きさんじゃね?」

「うわっマジだ!やべ、やっぱ可愛いな」

「あ、隣にいるの…ほらあれだよ雪ヶ丘…!」

「え、小学生じゃん。ウチとどうやってやるつもりかな」

「バカ!キャプテンマークつけてんじゃん、主将主将!」



…こりゃ完全に、バカにされてます



「オイお前ら!あんまりナメるなよ!俺の腹が治り次第…ぅぐ、試合で痛い目見せてやるから覚悟しとけ、よ!ぅぅ」

『君お腹痛いの?大丈夫?薬持ってるけどあげようか?』

「だだだ大丈夫デス、」




「…おい2年」


背後から声がした。誰のものなんかわかってる。

そして空気がよろしくないことも、わかってる。



「公式WU始まるぞ。早くしろ」


「やべっ影山さんだ」
「スミマセンすぐ戻りますっ」


うん、ピリピリしてらっしゃる


「ホラ急げ!あと2本」

「そんなつくっても飲まねーだろ、相手アレだぞ」

「ハハッ確かに」

「なんだとぉぉ」


勘が悪いっていうか、神経図太いのか…

よくやるなぁ、



「オマエらベンチにも入れねぇくせに対戦相手見下せる程強いつもりなのか?


…学校の名前に乗っかってんじゃねぇよ」




うっわあ…恐い、
ガン飛ばしすぎだよぉ




「お、俺も今びしっと言ってやるところだったんだけどねっ」

「体調管理もできないやつが、えらそうな事言うな。だからナメられるんだろ。一体なにしに
ココに来たんだ?思い出作り、とかか?」

「…勝ちに来たに決まってる!」



あ、どうしよう
完全に口挟むタイミングわかんなくなっちゃった。



ふいにパチリ、と目が合った


「ぎょーざ…!」



…今気づいたのね、


『おはよ、飛雄』

「お前練習は…!、」

『今日は午後からなの。だから来ちゃった〜。コートどこ?』

「…入ってすぐのトコ」

『わかった。ありがとう』



話が長くなりそうだから、先に行こうと二人の横を通って行こうとした。



「ちょっ…おい!」

『うわぁ!なに?!』



急に腕掴むな!びっくりする!


「…、」

『なに、どうしたの?』



なにこの子。人の腕掴んでおいてなにも言わないんだけど、、、?

すっごい眉間にしわ寄ってるし
表情恐いし




『……しょうがないな〜飛雄ちゃんは』

「その呼び方ヤメロ」

『はいはい、』



腕を伸ばして頭を撫でた。
嫌がらないところを見ると満更でもないんだろう


うん、真ん丸頭



『がんばれ、』

「…おう」

『君もお大事にね!』

「ファッツ!あああざス!」








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