コート上の天使

□心の内
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ピーッ



相手へ25点目が入ったことを証明するホイッスル。

私はコートに這いつくばっていて、目の前にはボールが転がっていた。

ぽたり、汗が顎を伝って床に落ちた。




嗚呼、終わった。




そこから整列して、挨拶もしたんだろうけど、あまりよく覚えていない。

頭がぼーっとしていた。





男子はまだ試合中で、ギャラリーから覗いた。



見えたのはライトへのトスが勢いそのままに誰も触れることなくコートに落ちる瞬間だった。




彼の夏も終わっていた。



結果は負け

男女揃って2位って、複雑








余計なお世話かもしれない。
けど、


『お疲れ。』



飛雄には飛雄なりの信念があって、バレーに向き合った。

その信念が籠ったトスを誰も受けることはなかった。


仲間からも、監督からも もう要らないと、拒絶された彼の味方は…?




『慰めてあげるって言ってんの』



飛雄にはバレーをやっていてほしい。


今でこそ、こうなっちゃったけど、初めて会った中一のころのあんたは、心底楽しそうにバレーをしていた。

今は苦しい時かもしれないけど、
あんたは”天才”なんだから。




『じゃあね』

「おう、その……−−とう」

『え?』

「ありがとって言ったんだよ!な、何度も言わせんなボケェ!」



走り去っていく背中を見送りつつ、家へ向かった。


ありがとう、なんて私にはもったいないよ


夕日も綺麗ですっかりセンチメンタルな気分。


このジャージも、エナメルバックも、もう使うことはない。シューズも、サポーターも、ウェアも。もう終わった。


バック越しに振動を感じて、画面を見る。
少し迷ったがスマホを耳にあてた。



『…もしもし、』

(もうぎょーざチャン出るの遅いー)

『う、すいません』

(どうだった?)

『どうって…』



主語はないけど試合のことだろう。


そんなの…サーブで崩されて、






バシィッ


「あっ、」

『一本切っていこう。落ち着いて!』




もう何点目かな




「…っぐす」

『こらぁー!試合中泣くな!!』

「でもっ」

『でもじゃないっ!

お願い、上に上げてくれればいいから…!2cmでも上げてくれたら私カバーするから、』



ようやく触って上がったサーブカット



どうする…!

どうすればこのサーブを切れる?!誰に繋げれば…





思考を巡らせながら気が付いた。




コートの中から声がしないことに。




誰の声も聞こえない。



みんなこのトスを欲しがらない



『…っお願い!』



レフトに上げたトス。

鋭い音を立ててブロックにかかった。

コートエンドまで走ったけど、ボールはコートに落ちた。


『…、』












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