コート上の天使

□王様と戦う
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約束だからな


と脅迫めいたことを言われ、指切りまでさせられて


行く?

…行かない?



一体どれが正解なの…!?




行ったらめんどくさいことは目に見えてわかるし、
行かなかったら行かなかったで…


『めんどくさい、』



だいたい何なの、飛雄は勝手にバレーやってればいい。


私のことなんてほっとけばいいのに。


バレーやりたいって思わせるって…仮に、そうなったとしてなんのメリットがあるって言うの?
烏野女子バレー部に入れとか言うつもり?



時計は試合開始時間を過ぎていた。



…行く、べき?



いや、でも…行ったところで何になる?





ぶるぶると手の中のスマホが震える



おはよー!
起きてる?及川さんはこれから練習だよ



なんてことない、むしろどうでもいい内容

だけど、このタイミングで連絡してくるこの人はエスパーか何かか



『…』


そうよ、行ったところで何も変わらない。
そう言いつけてやればいい。




私はこれから腹くくって王様と戦ってきます。




最低限の荷物を持って家を出た。










「岩ちゃん岩ちゃん!大変だよ、どうしよう!」

「朝からうぜぇな」

「ぎょーざちゃんが飛雄に喰われるー!」

「はあ?」

「あ〜及川さん心配だよ…!ちょっと烏野まで」

「ふざけんな!練習どうすんだよ、てめぇ主将だろ!」














ごくり、

生唾ごっくん



腹くくったとはいえ…体育館入りずらい、ってか入りたくないな


外にいてもボールの音や声が聞こえてくる。



休みの日にここまで来てもう引き下がれない




そーっと、本当にそーっと扉をほんのちょっと開けて中を覗いた。


コートに入ってるのは3人づつ。3対3?

強面坊主さん、飛雄、そして、腹痛オレンジ君


反対側は短髪黒髪さん、見たことあるから一年だと思うけど…えと、なんだっけ

あのもう一人の子とよく一緒にいる…


…あ、ツッキーだ。…本名知らないけど、


なんだ、これ。正式な試合じゃないんだ…

どっちが勝ってるんだろう、得点版まではさすがに見えない。



腹痛オレンジ君は頑張ってるけど、ツッキーにガンガン止められてる。


それでも打って、打って。まるで、あの時みたいに。







試合の流れが止まった。よく聞こえないけど、何か話してるみたい。



「コート上の王様って異名、北川第一の連中がつけたらしいじゃん。

意味は自己チューの王様。横暴な独裁者」



静かになった体育館。聞こえてきたのはそんな会話だった。



「クイック使わないのもあの決勝のせいでビビってるとか?」



ツッキー、なかなかいい性格してる。

でも事実だ。
飛雄にとってあの決勝は大きな出来事。


「あぁ、そうだ。トスを上げた先に誰もいないっつうのは、心底怖えよ、」



…意外、だった。

あんな下げられ方をしたんだから、悔いが残っただろうし、色々思うこともあっただろうけど、怖いって思ってたなんて…。

あの、飛雄が。



「えっ、でもソレ中学のはなしでしょ?俺にはちゃんとトスが上がるから別に関係ない。

どうやってお前をブチ抜くかだけが問題だ!」



腹痛オレンジ君の発言で重かった空気が少し軽くなった。


曲がったことなんて知らないんだろうな。

あんなキラキラした目でバレーやってるなんて。
あの飛雄や、ツッキーに真っ向からぶつかっていけるなんて…。




「影山っ」




あの腹痛オレンジ君、




「居るぞ!!」





真っ直ぐで





「俺はどこにだって飛ぶ!どんなボールだって打つ!」





私には眩しくて、






「だから、俺にトス持ってこい!」









苦手だ、。






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