コート上の天使

□戸惑い
1ページ/1ページ






「あれっ…みんなどうしたの?」


「あ、いや、あ。せ、先生こそ、どうしたんですか」


「あぁ。練習試合組めたんだ!県ベスト4の青葉城西だよ!」


「せ、青城っ!?」



頭がうまく動かなかった。


青城と練習試合なんて、めったにないチャンス



なのに、


ぎょーざで頭がいっぱいでうまく話が全然入ってこなかった。



「条件があってね、影山君をセッターとしてフルで出すこと」



こんなこと言うのはきっとあの人の仕業だ。



及川さん、






「俺は日向と影山の攻撃が4強相手にどこまでできるのか見てみたい。」



菅原さんにそう言ってもらったけど、俺の心は穏やかじゃなかった。



荷物持って速足であるく。






三年間一緒だった。クラスも、部活も



一緒にいたはずだった








俺、なんにもわかってなかったんだな










そう自覚した瞬間、後悔とか自分への苛立ちだとかがいっきに押し寄せてきて、
道のど真ん中に立ち尽くした。






「影山、?」

「菅原さん、」





俺の顔を見てなにか察したみたいに、気まずそうな顔をした。



「俺…初めて見ました、あんなぎょーざ。三年間一緒だったはずなのに」


「…、」


「泣いてるぎょーざ、初めて見ました」


「うん、」


「ぎょーざは、なんつーか…大人で、

中学ん時ベンチに下げられた試合の後、勢いでヒドイこと言っても、こう…」



どさっとバックを地面に置いて、あの時ぎょーざがしてくらたように両手を広げた



「受け止めてくれたってゆーか…」




思い出して恥ずかしくなった。何やってんだ俺…!


「すげーな、それ…。普通できねぇべ」

「っス…」



「影山はさ、なんで今日ぎょーざちゃんに見てもらおうって思ったの?」

「え、」

「なにか意図があって誘ったんだろ?」



菅原さんにそう言われて考えてみたけど、意図っていうほどしっかりした理由があるわけじゃない。



「…ぎょーざのトスが、見たかったから。バレー、一緒にやっててほしかったから、です」




「…触れる瞬間の音はほとんどしない、しなやかな無回転トス」



はっとした。

思い出されるぎょーざの手から放たれるボール



「ぎょーざちゃんのトス俺も見たんだ。あれはビビったべ〜。スローモーションみたいに見えたんだよ」


「っですよね!」


「ははっ食いつくなー」


「どこで見たんすか?大会とか」


「日向の練習中、かな」


「え…」





日向の練習中って、どういうことだ

高校入ってから、だろ



「日向がふっとばしたボールがたまたま彼女のほうに飛んで行っちゃったんだ。そしたら、トスして返してくれたんだよ」



あのトスを、



あんだけしつこくして、頑なだったぎょーざが




「まあ、無意識って感じだったけど」

「無意識、」


「そ。気まずそーな顔して走ってっちゃったし」




無意識で上げれるほど、体に染みついたバレー








「…お前のダメなとこは、がつがついっちゃうトコ!」


「!!」




びしっと指さされて背筋が伸びた。



「今度はさ、お前が受け止めてあげる番なんじゃねーの?」


「受け止める、」




もやもやがすっと晴れた気がした。

難しく考えたって、ぎょーざの考えてることはわかった試しがない。


だったら、今日みたいに感情を見せてくれたら、受け止める。受け止めたいって思う。




「菅原さん、」


「ん?」


「あざっす!…あと、青城ですけど。俺今回は自動的にスタメンですけど、今度は実力でとります」


「え!?」

「え?」



意外な返答に、思わず反応してしまった。


「いや、影山は俺のことなんて眼中にないと思ってたから、意外で」

「?なんでですか、」

「体格も技術も俺より断然上だろ?」


「…経験の差はそう簡単に埋まるもんじゃあり
ません」



俺は所詮1年で、菅原さんは3年生。
2年多くやってるんだ。




「スガー」

「スガさーん」



後ろから菅原さんを呼ぶ声を聴く。

みんなスガさんを信頼、してるのがわかる
それに、ぎょーざのことも…悔しいけど、俺より…




「それに、他のメンバーからのし、信頼、とか…こ、こ、コミュニケーション力、とか…!」

「あ、おう…」





ぎょーざは俺を今までで一番輝いてると言ってくれた。



「俺、負けません!」


「うん、俺も負けない」









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ