コート上の天使

□重圧
1ページ/2ページ





バアアアン…





破壊音とともに店の扉が開かれた。


「うわあああ!お、お前ぇぇ!もっと静かに入って来い!壊れたらどーすんだよっっ!」


『…ごっ、ごめんな、さい』


「ウチはお世辞にも新築なんかじゃねーぞ!ボロなんだからもっと…!!」




飛び込んできた奴はよく知ってる顔だった。


焼きぎょーざ ここいらの中学バレー界ではそこそこ有名人だった。

俺はこいつが中学の時から知っていた。



「お前、泣いてんのか…?!」


『う…っ烏養さ、んんっ』


「うわ、ちょっと…おい、!と、とりあえず座れ?なっ?飲み物…お茶でいいな!」



こくこく頷くぎょーざを座らせて、どうすべきかと考えを巡らす。

泣いてる女子高生の扱い方なんてわかんねーよ…!



「ほ、ほらよ」


『驚かせてすいません、ありがとうございます…』



裏にお茶取りに行って戻るとだいぶ落ち着いたみたいだった。


ただ事じゃないのには変わりないが。



俺はしょうがなく店の外の札を準備中にひっくり返した。



『お店、』


「あ?それどころじゃねーだろ」


『…すいません、』



タバコに手を伸ばしたが、やめた。



「で、?」


『…自分でもよくわからないんです、』


「はあ?なんじゃそりゃ」


『勢いでここまで来てしまって、』







中学生の時、ぎょーざはここのテーブルに座ってノートに向かっていた。

最初はなんか勉強してんのかと思ったが、違った。


フォーメーション、ブロックの位置、レシーブの配置

左手でトスのサインを作りながら右手でシャーペンを動かす。


ほぼ、毎日。


時折溜息をつきながら、頭をくしゃくしゃにしながら、
閃いた時はペンが走って、悩みながら





『私、痛いとこ突かれて、勢いで怒鳴った…
バレーなんでやらないんだ、決勝で負けて悔しくないのかって感じで。
それで、ぷちっといっちゃって…
あーしっくったな〜もう、』



ちびちびとお茶を飲みだしたぎょーざ。

とりあえずバレー関係でなんかあったらしいことはわかった。




『胸がこう、ざわざわして…久しぶりに。どうしていいかわかんなくて、今までどうしてたかなって…』


「それでここに突っ込んできたってワケか」


『あ、それはゴメンナサイ…』







「げ!坂ノ下閉まってる!」

「肉まんー!」

「職務怠慢だー!!」



外からでかい声がした。



『…バレー部だ、』


「アイツら、」






「しょうがない、俺んちでやるか」

「おー」

「おいそういえば影山クン、天使さんとどういう関係だ?あぁん?」

「なんでぎょーざのこと話さなきゃなんない
んすか…!?」

「あんだけ空気凍らせといて関係ないとはいわせねーぜ」

「ぐ…!」





つまりこうだ
男子バレー部の奴らとひと悶着あって、キレて怒鳴って
ここに来たってことか






ま…、コイツにバレーやれってのは酷な話かもな。








次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ