コート上の天使

□自問自答
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お前、何で泣いたんだよ






烏養さんの言葉

確かにその通りなのだ



私は何を泣く必要があったんだろう。


自覚したくないだけで、心はわかってるはず。



向き合わないといけない。









「焼き?」


『…!岩泉さん。お久しぶりです!』


「お前なにしてんだよこんな時間に」


『うーん…ちょっと色々ありまして』





ランニング中、だろうか。

手ぶらだ。






『…お一人、ですか?』


「…悪かったな、一人で」


『いや…寧ろありがとうございますってくらいなんですけど』





正直、及川さん一緒じゃなくて助かった。




「5回に一回でいいから返事してやってくれ。鬱陶しいから」


『え、あ、はい』





「…元気か?」


『へ?あ、はあ…ぼちぼちです、けど』




岩泉さんは及川さんのストッパーでよく居残ってたけど、私のこともよく気にしてくれてた。


なんだかんだで二人ともいいコンビなのはよくわかる。
超絶信頼関係、みたいな


そういう相手がいるのって羨ましい





「なんかあったのか?」


『え?』


「及川が叫んでた」




及川さんってほんとこわい


全部話してないのに、
むしろ話さないようにしてるのに

なにもかもお見通し、みたいにタイミングよく連絡してくる

さっきみたいに







『私は大丈夫です。そう伝えてください』






じーっと見られて居心地悪かったけど、
負けじと見返した




ぴゅーっと冷たい風が吹いた。



へっぷし、と情けないくしゃみが出た。





「ぶっ!お前なんだそのくしゃみ!」


『…恥ずかしい、』


「ほら、もう帰んぞ。送る」


『い、いいですよ。ほんとすぐそこなんで。ラ
ンニング邪魔しちゃってすいません。では、』


「ちょっと待て」






頭からばさっとジャージがかぶせられた。



「着て帰れよ」


『でも、岩泉さんは』


「俺はまだ走るからいいんだよ。じゃあな」




しゃーっと走り去ってしまい、姿はすぐに見えなくなった。




淡い緑のロゴジャージに腕を通して、やっぱ大きいなぁと感じながら家に帰った。










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