コート上の天使

□子守り
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…空気が、重い



バスという狭い空間で、逃げようがないこの空気。


というか、約一名がかなり重いオーラを放っている





言わずもがな影山なんだけど、




「か、影山?」

「…なんですか、菅原さん」

「あーっと、」




なんて言ったらいいかな、



気にすんな?…なにを?
元気だせよ?…ちがうな



ちらり、と大地を見ると
頼んだ、みたいな顔してる。田中も日向も…

月島は窓の外を見ていて、山口はなんか焦ってる




確かに及川には驚いたっていうか引いたっていうか…

あからさまな影山への敵対心?


それは影山も及川と同じなんだけど、

影山は及川と同じ中学だし、意識してるとこが多くあるんだろう。




俺にこの影山対処しきれるかな…




「俺、及川さんとぎょーざがあんな感じだとは思ってませんでした、」

「え、あ、あぁ」




思いがけない影山からの声掛けに、一瞬戸惑ってしまった。



確かに2セット目が始まる前の及川の飛びつきようは尋常じゃなかった。

先輩後輩関係だって及川は言ってたけど、それ以上に見えた。


ぎょーざちゃんかわいいし、及川も顔は無駄にいいから

くそ〜絵になるなぁと不覚にも思ってしまった



けど、話がよく読めなくて気になったことがある





「なあ影山、」

「はい」

「県内一のセッターって?」



影山はあぁ、と言って



「ぎょーざのことです。アイツ中学の時最後の県予選で優勝校差し置いてベストセッター賞とったんです」

「えっ…スゲーじゃん!」

「!すげーっスよね、すげーのに…」




なんか考えはじめてしまった影山


俺にはなにがあったとかよくわかんない、というか全然知らないけど


影山はぎょーざちゃんのプレーが好きなんだなっていうのは伝わるし、
影山が知らないことも及川はわかってるんだろうなっていうのも。





「及川さんは全部知っててあんな言い方、。」

「まあ…なんかいやーな感じの言いぶりだったな」




及川はあんな感じだったし、ぎょーざちゃんに聞いても答えてくれなそうだし、


影山は大変、かもな



でも、




「あー…なんていうか、さ」

「?」

「これからは烏野のマネージャーじゃん。近くに居るんだし、これからわかっていけばいいんじゃないのかな」



「!…ッス」




きらりと目を輝かせて縦に頷いた影山。


その表情は、ついこの間まで中学生だったことを感じさせた。






「…ていうかさ、」

「?」

「あ、いや、なんでもない」





影山ってぎょーざちゃんのこと好きなの?









聞いたところで…だよな

影山の場合、素直に認めなさそうだし。




テンパって


ち、ちげーですっっ!


とか言いそうだもんなぁ…





「…なんすか菅原さん」

「いやー?影山も可愛いとこあるんだな」

「はあ…?」

「楽しみだな、ぎょーざちゃんが部活来るの」

「…ッス、」




あーなんか…安心するわ、
バレー以外は不器用そうで



微笑ましいな〜なんて思ってたら、
影山の表情が若干険しくなった。




「?どうした」

「…先越されました」

「は?」



若干、どころではなく
完全に拗ねちゃってるわ、これ



「ぎょーざとバレーするの、絶対に俺が最初って思ってたんスけど」



あ、あ〜
及川のアップに付き合ってたな、そういえば




「ま、まぁ…これからいくらでもできるだろ?なっ」






え、待って



俺なんでこんな影山に気使ってんの?





大地と目があって、ぐっと親指を立てられた。


いやいや…違うだろって




影山を見るとじーっと一点を見つめていた。


ぎょーざちゃんのプレーでも思い出しているんだろうか。






「…ぎょーざちゃんはさ、及川でも誰でもなくお前の言葉で決心ついたんだ。
自信持てよ」



そんなことを言えば、小さくだけど


オス、と聞こえてきた。













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