コート上の天使

□1年5組の天使
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寝ぐせもアホ毛もないつやつやの髪
皺ひとつ付いてないスカート
そこから伸びるほっそりした足に真っ白な肌



彼女が通った後はいつもいい香りがする。
甘すぎず、でも女の子を極めている。
そんな香り


同い年はもちろん、他学年の人も目で追う


焼きさんは完璧だった。





爪も可愛く、いつも綺麗にしてるし、
唇は色付きリップだろうか。ほんのりピンクだ。

焼きさんのかわいさは所謂高校デビューとかじゃなくて、
洗練されたもののように思える。





「ねえ!昨日のドラマ見た?」

『あ、見た見た〜』

「すっごくよかったよね!」



いつも話題の中心にいて、



「あはは!やばーい。もうぎょーざ最高!」



みんなから好かれる人気者。


けど決して媚びてるような感じはなく、程よくさっぱりとした性格なのが人気の理由だと私は思う。



「ぎょーざ」

『あ、飛雄おはよー』

「今日、昼休み空けとけよ」

『え?なんで』

「清水先輩がお前に会いたいって」

『え、美人マネージャーの!わかった』



男の子と話す時も常にフラットな接し方。


けど、別れ際には自然にひらひらと手を振るところがやっぱりモテる女子っぽい



そんな焼きさんを、私なんかとはまるで世界が違う人間だなぁと思いつつも、遠くからいつも見ていた。

なんていうか、アイドルを見るような気分で。


話しかけるなんて一年、いや三年かかっても無理なんじゃないかと思う。



…図々しくも私はアイドルと隣の席だけども








予鈴がなって一限目。


英語だ。



授業中も焼きさんは完璧だった。


寝てるところはまだ見たことないし、予習だってしっかりしてくるし、あてられてわからなかったことがない。



けど、
よくぼうっと窓の外を眺めていることがある。


きらきらと太陽の光を受けて髪の毛が輝く。

真っ黒じゃなく、明るい髪色。かといって染めたような痛みなんてなくて。
もともと色素が薄そうだから地毛なのかも。





その横顔が私はすごく好き。




…け、決して変な意味ではなくて!




「次、谷内さん。和訳して」

「!フェッッ!」



黒板を慌てて確認して、進行状況を確認して教科書に目を戻す。



ああ…!私ってツイてないな


こういう時 なんで解らなくて飛ばしたところをあてられるのか…!


神は我を見離したとはこのことか




「あ、え〜っと」



どうしよう、わかんない

クラスの目が全部自分に向いてるみたいですごく恥ずかしい


脇やら手やらに変な汗をかいていた時、
左横から綺麗な字が並ぶノートが視界に入ってきた。



『(大問5はコッチを先に訳して、)』

「!えっと、え〜陪審員になると、時間がかかるものであり、えー、公平公正でいることが難しいと思われる…!です」



シャーペンが動く先に誘導されながらなんとか乗り切った。



「はい、そうですね。次は−」



ドキドキしたまま左を見ると救世主はすでに教科書をめくっていた。



「(あ、あの)」



小声で声をかけた。



…声を、かけてしまった。あの焼きさんに。


あの焼きさんに…!アイドルと会話…っ!?


気が付いた時にはすでに遅し。

こっちに気付いてくれてしまっていた。



私はファンクラブの方に消されるかもしれません。



南無阿弥陀仏、何妙法蓮華異教…




「(あっと…その、あ、あり)」



ありがとう




ひと言お礼を言えばいいだけなのに、綺麗な顔を前に緊張してまともにしゃべれない。




焼きさんはにこり、と笑って



『(どういたしまして)』






涙が出るくらいの美少女


きらきらして見えた。




神様、天使って本当に居るんですね














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