コート上の天使

□もどかしさ
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東峰さんが部活に来ない理由がなんとなくわかった。


エースは三枚ブロックと戦わなきゃならない。それをある試合では完全シャットアウトされ、なにもさせてもらえなかったらしい。


それ以外にもなんか…いろいろあるんだろうけど、
バレーが嫌いになったかはまだ決まってない。








体育館に行くとほとんどの人が来ていた。
でも、一通り見回してもあいつは居なかった。




「ぎょーざちゃんなら遅れるって」

「!うあ、うっす…」




清水先輩に背後から話しかけられ変な返事をしてしまった。

なんで…わかった、?




そのあとすぐに菅原さんが来て、部活が始まった。













『お、遅れました〜!』

「!高宮さん来た!!」

「ボゲェ!よそ見すんな日向!」



「みんなお疲れ様!」



ぎょーざが来たのはストレッチ、ランニングが終わって、アップを始めたころだった。

武田先生も来て集合がかかる。


パスそっちのけの日向に怒鳴りつけたものの、そわそわした自分がいた。

昨日は初日でほぼ見学してたみたいなもんだから、今日から本格的に入る。

テンション上がらないわけがない。


ぎょーざとまたバレーをやる。






「今年もやるんだよね?GW合宿!」

「はい。まだまだ練習が足りませんから」



GWは貴重な休みだ。学校がないから一日中バレーができる。





「最終日…練習試合組めましたー!!」

「頼もしいな武ちゃん!!」




相手は東京の音駒高校。

知らないところだったけど、昔っから交流はあったらしい。



「貴重な練習試合だ。練習も合宿も気合い入れんぞ!」


「「オス」」





















「休憩!」



スムーズに練習は進み、休憩に入った。



わらわらとマネージャーのもとにボトルを受け取りに行く。

ぎょーざと目が合い


はい、お疲れ

とボトル手渡され、ポンと腕を叩かれた。



そのあともなんとなく目で追っていた





『田中さん、さっきのラストのスパイク良かったです』

「え…!あ、マジっすか!」

『はい!ナイスコースでした』

「あ、アザーっす」





『西谷先輩惜しかったですね!』

「次はぜってー取る!」

『その意気です』

「おう!ちゃんと見とけよ!俺のスーパーレシーブを!」






『はい、お疲れ〜』

「ドーモ…」

『蛍くんはさ、飲み物薄口派?濃口派?』

「濃いのは喉乾くから嫌だ」

『うん、でしょうね』

「はあ?なんなのキミ」

『薄口派って顔してるから』











ぎょーざはすっかり溶け込んでいた。

月島のことも下の名前で呼んでる。


ちょっと、なんか、嫌だ




「さっすが天使。よくやってるよな」

「菅原さん、」

「あぁやってちょっと癖のあるやつには積極的に話しにいってる」





癖のあるやつ
田中さんはよくわかんないけど未だに敬語だし、
西谷さんは昨日会ったばっかだし、

月島は…月島だからだし、



「手際も良いし、コミュニケーション力あるし、良いマネージャーじゃん?」





マネージャー





そっか、あいつマネージャーだ


だからなのか、

あいつが学校指定の体育館シューズを履いてるのは。



バレーシューズ、履けばいいのに。




『ん?』

「!いや、べつに」



慌てて反射的に目をそらす





『…ねぇ、』

「な、なんだよ…」






横目で顔を見ると、空になったスクイズボトルを両手で軽く押し潰しながら
控え目に口を開いた



『あの…さ。ラスト前の一本、なんか…打ちにくそうだった』

「!」






ラスト前の一本、

レフトへのトス 縁下さんだ







「縁下さん!」

「え、な、なに?」

「トスどうでしたか?何かありますか?どんな些細なことでもいいです!
直します!」

「え、えーっと…もうちょいネットから離してもらえると助かる、かな」

「わかりました!」





ぐるっとぎょーざを振り返る
ずんずんと目の前まで歩いてけば、なんとも言えない顔をしていた




『なんか、偉そうにごめんね』

「?」





今さらなんだ


今までも俺の気づかないようなところを助言してくれていた

何を改まる必要があるんだ



「他には?」

『え、』

「もっとないのかって聞いてんだよ」

『…顔コワイ』

「…っもともとこんな顔だボゲェ!」





休憩が終わり、駆け足でコートに戻る




なんだよ、ごめんって
なんだよ、偉そうって



今まで通りでいいのに、




中学の時とは違う


バレーを一緒にやってることには変わりないはずなのに、


これじゃない感はなんだ





弾いたボールを退かしてるぎょーざが見えた。


ボール拾いに、ボール渡し
ドリンク作りに床の汗拭き



もどかしさを感じるのはこれなのか



必要最低限ボールに触れないぎょーざ





コートの外じゃなくて

中に居ればいいのに、と欲張るのはいけないんだろうか















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