コート上の天使

□待ちわびた共演
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「ワンタッチ!」

『はいはーい』




綺麗に上がるボールをライトのアンテナぎりぎりまで伸ばしてトス。




「ナイスキー!」



気持ちいい。
と同時に心臓がやたらに騒ぐ。


別に疲れてるわけでも、息が上がってるわけでもない。





「うおおい!そこのちんちくりん!なんでそこに飛んだ!?」


コーチに勢いよく聞かれる日向。

ちんちくりん 笑える。






「ど、どこにいてもトスが来るから、です」




目瞑ってスパイク打ってると知った時は俺もビビった

けど、コイツなりに理屈があるらしい


俺は理解できねぇけど




「なんだあ、お前ら変人か?」



お前ら?




「変人?なんで…?」



俺も知らねえよ。







『日向くんナイスキー』



そうだ。今のはぎょーざからの連携で決まった一点だ。



ぞわぞわと、興奮がまた蘇る。



「…なにニヤニヤしてんの、お前」

「っうっせぇ!」




ニヤニヤして何が悪い。


今俺は楽しくてしょうがないんだ。




同じコートにぎょーざがいる。

ぎょーざがレシーブしたボールを俺がトスする。


最近のもどかしさなんて一瞬で吹っ飛んだ。


中学の時でもパスし合ったりはしても、試合はなかなか男子と女子じゃする機会がない。


高校で、まさかできるなんて。








『ブロック二枚!』



相変わらず、フォローもしっかりしてるし
一個一個のプレーが丁寧





「ラスト頼む!」

『はい!』




アンダーで返したボールは相手コートのエンドライン付近に落ちた。


「うお!すげえ!」

「ナイス返し!」




チャンスボールをタダでは返さない。




やっぱこいつ上手い、









『ん?』

「…やっぱ上手いなお前」

『へ、あ、何言ってんの?』

「上手いなって言ってんだよ」

『…普段言わないようなこと言わないでくれる?』




ツン、と顔をそらしたかと思えば
また目が合い、ふわっと笑った。



顔が熱くなってまた目を逸らした。



サーブカットを綺麗に返され、相手の攻撃でボールが返る。

ブロックの間を抜けたスパイクを反射的に触る。


セッターである自分が一発目で触ってしまうと攻撃が単調になる。


けど、今は






運よく高く上がったレシーブ。

ぎょーざと目が合った。





「ぎょーざ!」



はーい、と周りに声をかけた。

そして、アタックラインを超えないぎりぎりで踏み込み、ジャンプトス

放たれた瞬間、回転と勢いは殺され、



まるで無重力。




すうっとレフトに伸びて






「だっしゃらああーいっ!」






コートにぶち込まれた。









「てっ、てっ…」

『田中さんナイスキーです!コースばっちり』

「あ、いや、!なんか」



口が開いてるのが自分でもわかる。

まさか、ジャンプトスまですると思わなかった。



「ボールがふわあって…」

「焼きナイストス。すごいな。こっからジャンプトスとか…」

『ありがとうございます。遊びでやってたんで結構好きです。』

「今のすげえええ!なになに!?俺も焼きさんのトス打ちたい!」




周りがぎょーざのプレーで熱くなってる。


「な、ナイス」

『飛雄もナイスレシーブ』





なにコイツ



俺には天才、とか

さすが、とか言うクセに




普通に、いや


もうなんか、上手いし





なんだよ…

なんか悔しいけど





「おい、」

『ん?』


顎の下の汗を拭ってるぎょーざ
久しぶりに汗だくになってるところを見た。




「また俺が一発目取ったらお前がトス上げろよ」



そう言えば、目を丸くした。

すぐに、笑って拳を突き出してきた。



『まあ、頑張るよ』


出された拳に自分の拳を合わせる。




「おう」



悔しいけど、負けねぇ


ああ、俺今最高にバレーを楽しんでる。












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