コート上の天使

□小さな戦士
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復活したあさひさん、そのエースとの抜群の相性のセットアップをしたスガさん。

そして守護神に四谷先輩が混ざった烏野町内会チーム相手に、力及ばず負けた。


それでも、たくさん得るものがあったと思う。


プレーの面でも気持ちの面でも。





『日向くん』

「え、あ焼きさん」

『ナイスファイト。右手、出して。』

「?うん」




あさひさんのスパイクをワンタッチ取った時に、指が持っていかれてたように見えた。


タオルを手に当てて、コールドスプレーを吹きかける。




「うおっ!冷たっ!」

『指痛くない?』




そう言えば日向くんは手を握ったり開いたりする



「…ちょっと痛いカモ」

『そんなに酷くはなさそうだね。よかった』




念のためテーピングを簡単に施した。


巻いている間、じっと見られてやりにくかったけど、





「うふぉお!すげぇ!テーピングだ!」



右手を天井にかざして嬉しそうだった。

…なんで?




「俺っテーピングとか初めて!」

『なるほどね、そうなんだ』

「しかも超キレイ!ありがとう!」




うわあっと感嘆をこぼす日向くん。

この様子だと落ち込んではいなさそうだ。




エースに憧れてバレー部に入って、
でも本物のエースは自分よりもタッパもパワーもあって

自分にないもの全て持ってるように思えたんだろうな。



そういうところって余計に気になるものだよね




『…ねぇ、日向くん』

「なに?」

『あくまでもこれは私の意見、なんだけど』



そうひと言先に言うと、目を丸くして、
でも真剣に聞く、とその目が語っていた。





『バレーって無駄な人っていないと思うんだ。

確かに、派手でカッコイイのはエースだったりするのかもしれないけど、そのスパイクが打てるのはトスがあるから。
トスが上がるのはレシーブがあるから。
レシーブしやすくなるのはブロックのワンタッチがあるからかもしれないし、ノーマークで決めれるのは囮がいるから。』





思い出すのは中学の時。


私はチームプレーできてなかった。
一人でなんとかしようと戦ってた。





『それぞれが、それぞれの仕事をすればそれだけいいプレーなんだよ。

そこに誰よりかっこいい、とか勝ってるとかない。それが勝利への道だと私は思う』






言いきってハッとした。


図々しく言い過ぎだ。

後悔の波が押し寄せる





『あっ、その、説教っぽくなって…ごめん』

「ううん…!そんなことない!俺、なんか、こう…ぐおわーってキタ!」

『は?』

「ぐおわーっていうかスカッというか…!」




そこは、どっちでもいいんだけど、な。


とりあえず気を悪くした様子はないからホッとした。




「俺っもっともっと頑張る!最強の囮になって、それでそれで、」




身振り手振りで大きく目標を語る日向くん


あぁ、やっぱり眩しいなぁ



これからどんな風になるんだろう、


天性の素質と、向上心、バレーが好きな気持ち






「俺がいればお前は最強だ」







天才セッターにあんなことを言わせたんだ。

きっと日向くんはとんでもない存在になるんじゃないか







『…うん、期待してる』

















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