コート上の天使

□天使には敵わない
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いよいよ今日から合宿だ。




人生初の合宿だ、ってことと

エースもリベロも揃って、そしてバレーがめちゃくちゃ上手いマネージャー!


それが全部仲間なんだと思うとワクワクが止まらない。

叫び出したいほどの気分だったけど、なんとかグッと堪えた。








「かっげやまー!」



教室の入り口で声をかけると あ?
と言ってそうな顔でコッチを見た。


いつも思うけど、あの眉間の皺取れなくなったらどうすんのかな



「昼!一緒に食おうぜ」




いつもはクラスの友達と食べてるし、影山はいっつもひと言多いから
好んで学校ではつるんでないないけど、今日は聞きたいことがあった





「…嫌だ」


「はあっ?!なんでだよ!」




露骨に嫌そうな顔をする影山がムカつく


断られたけど、影山の前の空いてる席に勝手に座れば、
しぶしぶって感じでおにぎりを出してきた。




「なあ影山」

「あ?」

「焼きさんてさあ、」

「あ゛ぁ?」



いつもの あ? より強めに返ってきて
ビクゥと不覚にも肩を揺らしてしまった



「な、なんだよぉ」

「…ぎょーざがなんだよ、」

「焼きさんってすげーな!」



そう言いうと、影山はおにぎりを咀嚼するのを止めた。




「……わかんのかよ」

「おう。プレーもさ!めちゃくちゃ上手くてうわぁーってなるけど、

すげえ気が利くし、落ち込みそうになると声かけてくれんだよ!それがなんて言うかすげえ!って感じでさ!すっきりすんだよ」



この前烏野町内会チームと試合した時
旭さんを見て、なんで俺は…とか思ったけど!



影山の言葉も、もちろんガンっと心に来た。
田中さんもこう、ズシッとくるようなことを言ってくれた。



けど焼きさんのは、すとん。

と落ちてくるみたいな

ぐおぁって来るんだけど、スッとするっていうか…



ん?なんか上手く説明できない




「…ぎょーざはそういう奴だよ」

「なんであんな性格の良い子がお前みたいのと仲良いんだ?」

「あぁ?!」

「だってほんとのことじゃん!?」




影山はぐんぐんヨーグルを引っ掴み、ズゴゴ…と吸った







「…三年間同じクラスだった」

「へぇー!」

「部活も、ポジションも同じだったし」

「ふぅん」




…影山って、バレー以外の話とかできんのかな




「なんでお前ぎょーざのこと聞くんだよ」

「え?何かダメだった?」

「なんでだって聞いてんだよ」



ぐぐ、と皺が濃くなった気がする。



「気になったから!」



「…は」

「どんなバレーしてきたのかなぁって!あんな上手くてさ!
頭良くて、影山とも仲良くて!仲間だし、俺も色々知りたい!」




そのまま言ってやれば、黙りこくった影山。


なんか、俺、まずいこと言った…?






「…本人に聞けよ、そんなん」

「それがさー、いろいろ聞こう!って思ってもいつの間にか俺が喋ってるんだよね。
気が付いたら。焼きさん聞き上手だよな〜…」




うんうん、ってにこにこしながら聞いてくれるから、つい喋りたくなるんだよなぁ。

そういうとこ菅原さんに似てるかも!



「…あいつが何考えてるか俺にわかった試しがない」

「へ、」




影山は頬杖付きながら窓の方を見る
結構真面目な顔で

眉間に皺はない。




「逆にアイツは俺のことなんてお見通しだ」



口悪くて、目つきも悪くて、愛想もない影山を
わかりきってるから上手くやってけてるのかな
って思うけど

影山はなんか不服そうだ





「俺はぎょーざには敵わねぇよ」

「え゛!」

「あ?」





か、影山が降参した…?




あの、影山が



他人に降参…




あの、王様が…





王様って言うと怒られるからあんま言わないけど、







ってことは、焼きさんって何者…?





王様が敵わないなんて、







…あ、そっか





「天使だった…」













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