コート上の天使
□愛でる
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「うおおーっ!すげーっ初めて来た」
合宿所に着くなりありとあらゆる襖を開け、部屋やら風呂やらを片っ端から見る日向。
そのはしゃぎっぷりったらもうすごい。
俺はもう何回も来てるから何とも思わないけど、初めて来た時は日向ほどではないが、気分が高揚したのを思い出した。
「おい、お前ちょっと落ち着け」
「だって、合宿って初めて…!」
きらきらと目を輝かす日向は見ていて微笑ましい。
「一日中むさ苦しい連中との顔つき合わせて何が楽しいのさ」
「コラ月島ぁ!半径500m以内に清子さんが居る空間はむさ苦しくねぇんだよ!」
西谷と田中が騒いでる
でも
「清水は用事終わったら帰っちゃうよ。いっつもそうじゃん」
あからさまにテンションだだ下がりの2人は安定だな
「おい龍…!わすれちゃいけねぇ」
「はっ、そうだ…!今年は天使が!!」
「ぎょーざーっ!」
落ち込んだかと思ったら上がって、騒がしいやつらだ
でもぎょーざちゃんどうするんだろうな、
家割と近いみたいだし…
「おい、帰るとか言わないよな?」
『?一応、居るつもりですけど。帰ったほうがいいですか?』
「いやっ!帰らないで!いい!いいんだ!」
「これで合宿所の癒しは保たれた…!」
『…なんかよくわかんないですけど、早く手洗ってください。清子さんの料理が冷めますよ』
うるさい2人を完全に扱いこなしてる…!
あっと言う間に馴染んだなぁ…
「なんか悪いな、うるさくて」
『スガさん、』
「でもすっかり慣れたみたいで安心したよ」
『みなさんわかりやすいので助かります』
妙に納得して笑ってしまった。
『でも、いいんですかね。私、だいぶ練習混ぜてもらっちゃってますけど…』
あの練習試合以降、烏養さんの半強制的な指示で試合形式の練習に混ざってくれてる。
もしかして、気にしてるのかな
『清子さんは気を使わなくていいって言ってくださるんですけど、』
夜飯と昼飯は清水が
朝飯と夜飯の後片付けはぎょーざちゃん
どうやらぎょーざちゃんがなるべく練習に参加しやすいように清水が提案したらしい。
「人数ぎょーざちゃん入れて丁度だし、それに入ってくれて俺らすごいいい練習になってるよ。みんなモチベーションあがるし」
特に影山とかね
ネット挟んだ向こう側からよく見える。
普段からバレー馬鹿なのはわかるけど、なんていうか、顔が違うよ。
険しい顔してることが多い影山がなんか楽しそうだ。
ぎょーざちゃんのプレーをよく見てると思う。
『だったらいいんですけど…。』
「うん。だから安心してプレーしていいよ」
俯いてた顔がぱっと上がる。
目が合い、はにかんだ笑顔
あ、なんか
『ありがとうございます、』
かわいい、なんて思って
気がつけば頭に手を伸ばし、よしよしと撫でていた。
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