コート上の天使

□不器用
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いよいよ合宿最終日



そして

練習試合
対音駒高校

通称 ゴミ捨場の決戦





試合を見るのは
青城戦以来


しかもあの時はいろいろバラバラだったし、
私もしっかり見れなかった
特に第二セット……



それに

やっぱりユニフォームがあるのとないのとじゃ大違いだ



見た目だけじゃない。

気分的にも背筋が伸びる思いになる

特に一年生は初めて烏野のユニフォームを身につけるんだから





「集合!」



大地さんの号令でみんなが整列する。

ビシッと2列の黒と赤


どんなバレーが今日は観れるのかな





「なんかぎょーざちゃん楽しそうだね」


『え…気持ち悪い顔してますか?』



潔子さんに言われて
顔を真顔に戻す

ニヤニヤしてたかもしれない、、



「ううん。ぎょーざちゃんが笑ってるとみんなも気合い入ると思うよ。」



まっさか

潔子さんの笑顔のほうが
価値あります

田中先輩とか西谷先輩とかとかとか…




「はぅあ!」


って思ったそばから
音駒のモヒカンさんが潔子さんにやられてる。

さすが美人…恐るべし



「私先これ置いてくるね」

『はい』




私も記録やらなんやらで使うものを準備しなきゃ



バスから物を降ろしてた時だった



のしっ



『ひっ』


急に頭に何かが乗り
そのせいで変な声が喉から出る



「よお、ぎょーざチャン」


頭上から降ってくる声
ぐぐっと見上げると



『…重たいです、鉄朗さん』


にやーっとした笑顔の鉄朗さんが
腕を頭の上に腕を乗せてきてた。



「この前は助かったよ」

『はあ、お役に立てたようで。
…てゆうか、』

「ん?」

『主将、だったんですね』

「一応、コレでもね」

『そこまで言ってませんよ』




掴み所のない、というか
なかなか攻略できないタイプ


プレーもそんな感じ、なのかな…
だとしたら

すごくやりにくい




「ま、今日はヨロシク」

『こ、こちらこそ』



乱された髪を直してくれて
ひらひらと手をふってチームメイトに合流していった。


私も急ごう




「おい」

『っわ、びっくりした…なに、飛雄?』



振り返れば
眉間に皺、シワ、しわ…



『…すっごい顔だけど、大丈夫?

お腹、痛いとか…?』


「…さっきの誰ですかコラ」

『えっ』



け、敬語?
てか、なんで田中先輩口調…?



『誰って…鉄朗さん?音駒の主将、だけど』



そんなに眉間に皺寄せて聞くことかな?

疑問から思わず首を傾げてしまった


等の本人は俯いてなんかよく顔が見えない



『飛雄?やっぱりお腹痛』

いんじゃないの?
って聞き終わる前にぐわし!と肩を掴まれた



「知り合いかよ!なんでそんな仲良さそうなんだよ!下の名前呼びってなんだ大体お前は愛想振りまきすぎなんだよだから」

『え、え、え、ちょっと』

「あ゛?わかったか?!」

『いや、だから』



ものすごい圧に視線を飛雄からずらせば蛍くん

プスーッと明らかにこっちを見ながら
通り過ぎた


いやいや
助けてよ



視線を泳がせて周りを見ても
みんなそれぞれが色んな意味で忙しそうだ。




「聞いてんのか?」



はっと
飛雄を見れば
心なしかさっきより顔近い




『聞いてるけど、』


答えれば
黙ってしまった



眉毛なんかキッと上がって
唇も突き出て
なに不機嫌なのかよくわかんない



でも…

この顔の険しさだからかな
なんだか ふと

中学のころの飛雄を思い出した



ちょうど
日向くんとの試合の前も
なんとも言えない顔してた


気を張ってるけど、脆くて…






そんなこと思い出したせいか
飛雄が不機嫌、
というより必死に見えて




なんか、やっぱり

ほっとけないなぁ…なんて




目の前に立つ飛雄の背中に腕を回して
そのままぎゅうとくっついた



「!う、あ…」

『なんかごめん』




全部わかってあげらんなくて
でも、



『不安にならなくても

…側に居るよ?』




どどどど

って心臓の音が聞こえる



「……お、う」




声も響いて
なんか変な感じ


けど
返事があって安心した



ぽんぽんと背中をなでれば
ぐっと抱きしめ返されて

不覚にも 心臓が跳ねた



「…そう、だよな」



肩口に顔が入って喋るから
首に息があたってくすぐったい




『うん、そうだよ』





大人しくなった飛雄は
怒られた後の子どもみたい

逆にこの後試合大丈夫かな…



しばらく背中を撫でてたら




「おーい、そこ二人!いちゃついてないで早くおいで!」



スガさんの声


気がついたのか
すっっごい勢いで離れた飛雄



「あ、え、その、おれ…!」


顔真っ赤にしながら視線が泳ぐ

あーとかうーとか
意味をなさない言葉がどんどん出てくる


忙しいヤツだな



『ほら、スガさん呼んでる』


さっさと行きなよ



そう言ったら


すごいちっさい声で












「…ありがとな」





.

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