コート上の天使

□いざ音駒
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上に上がってビデオカメラを起動させて、
私はカメラとは別の位置に移動した。



見下ろすと黒とオレンジのユニフォームに身を包んだみんながコートに立っている。


普通に、ワクワクしてることに気がついた。




日向くんが下から手を振ってきたので振り返した。



よかった。緊張はしてないみたい。






「お、マネちゃん!」

『嶋田さん!応援ありがとうございます』



客席にはパラパラ人がいて、
嶋田と滝ノ上さんもいた



「音駒はなんか懐かしくてさ。

あ、この前は買い物ありがとうね」


『こちらこそ安くしていただいて…!』



合宿の食材買出しに嶋田さんのお店を利用させてもらったのだ。
ちなみにグレープフルーツを安くしてもらった




「また彼氏と来てよ」




…彼氏?




「彼氏背高いね。
なんかスポーツやってんの?」




…彼氏?
背高い?




そこまで頭のなかで繰り返して
思い当たる人がいた
調子のいいあの人




『あれは彼氏じゃないです!』

「えー、やたら距離近かったくせに?」

『あの人はそういう人なんです!』

「なになにマネちゃん彼氏いるの?」

「そー。背の高いイケメン」



だから…違う!!



誤解を解消できぬまま
試合開始のホイッスルがなってしまった


納得できない状況ではあるが、
ホイッスルと共に頭のスイッチも切り替わった



せっかくの練習試合
余すことなく自分たちのものにしなくちゃ



ノートとペンをかまえる

なんのプレーで点が決まったかとか、簡単な記録は潔子さんがベンチでとってくれてるはずだ。



だったら
各スパイカーの打数
サーブレシーブ受数、成功率
サーブ効果、ノータッチエース



どこまで記録できるかわかんないし、計算できるかわかんないけど


やってみたい





『よし、』



ふぅっと深く息を吐いた
私も気合い入れる



サーブが来る
金髪プリンさん

旭さんがレシーブ
少し短いように見えるが問題ない


最初の1点は
やっぱり




「なに今の!すっげえ速い!」



超速攻




自然と拳を握ってしまった



相手は東京
どんな方法でこの速攻に対抗してくるんだろう。


楽な相手じゃないはず




だからこそ、わくわくする


なんでかな
実際にプレーしてるのはみんななのに
思わず口角が上がってしまう



「旭さん!」
「ナイスキー!」



コートの中のみんなも
コートの外から声かけるみんなも
みんな頑張ってる


烏養さんも
先生も




私もみんなのために頑張りたいな、



なーんて
熱くなっちゃってる自分に気づいて
笑えた


にやついてたら
コートの飛雄と目があった

ぐっと拳を出してきたから
私も同じように拳をつくった

そしたら満足層に頷いてた。





ライトへのトス
誰も打たずにコートに落ちたあの時

あの後ろ姿が最後に見た飛雄のユニフォーム姿


白と青のユニフォーム


今は黒とオレンジ
それに




『今は1人じゃないもんね、』




その事実が誇らしかった










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