コート上の天使

□複雑な勝ち方
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「おいなんだよそのアタマ、烏養」

「うっせぇな。お前は変わんなすぎだろ、直井」




あの頃となんも変わらない髪型

東京でやろう、
なんて熱く握手なんかして約束した
ことがつい最近のように思い出せる



ま、俺達はベンチ温め組だったけどな



疎遠になった音駒とまた試合ができる
先生には感謝だ




「うおい!お前それ右左逆じゃね?」

「なにやってんだよ影山ぁ」

「〜っ!うっせぇ日向ボゲェ!」

「シューズくらいちゃんと履けよな」



日向影山に加え田中西谷



安定のうるさい組
だけどコイツらがいないと成り立たないのも事実




「ほーら影山テンパるなよ」

「てっ…!テンパってませんから!」

「もしかして緊張してんのか?!」

「それはお前だろうが!」



つかサーポーターも後ろ前じゃね?
おいおい、アイツ大丈夫かよ

浮かれてんのか?
そんな地に足ついてねえような奴じゃないだろ



「お前ら騒いでねぇでさっさとアップとれ!」


オス、と返事した顔は
そこそこ気合い入ってた
そのへんは流石だ



アップとりながら士気も高まってきて
いざ、ゴミ捨て場の決戦
しっかり飛ばしてけよ




「?おい、」

『はい、なんですか?』



さあ始めるぞって時に
輪を抜けるぎょーざ



「もう始めるぞ」

『?はい、わかってます』

「どこ行く」

『どこって…上ですけど』



上?
上はギャラリー
ゴミ捨て場の決戦なだけあって人が多少多い



「公式戦じゃねえんだからベンチ居ていいんだぞ?」



きょとん、としてから
笑った



『公式戦には居れないからベンチ入らないんです』


それに、と続く



『ベンチはコートに近すぎるから』

「どういう意味だ?」

『どっちも見たいんです。そんな近くにいたらがっつり入り込んじゃいそうで』


それでいいんじゃないのか?
たまにこいつはよくわかんねぇことを言う



『あのへんで見てるので』



指差した方には三脚にセットされたビデオカメラも



「お前、」

『なんかあれば呼んでください』



選手一人ひとりに声をかけ、
ただ影山には何も言わずに背中をポンと叩いた。



ギャラリーに上がっていく姿を目で追うと、やはりビデオカメラを弄った。


手にはノートとペン

やはり、察したことは間違ってなかったみたいだ



「烏養君?」

「ほんと…出来たヤツだなあいつは」

「ああ、焼きさんですね。私なりに頑張りますって言ってくれてましたよ」



ぎょーざは聡いヤツだ
なにが求められてるのか、たぶん
あいつにはわかるんだ…



ふ、と
ある考えが浮かぶ


こいつらを勝たせるためのアイディアだということと同時に、複雑な気持ちになる。


選手のために動くのがマネージャーといえど、我ながら酷なことを思いついたもんだな



これをアイツに言えばきっとそうするし、
戦力になる
勝ちに繋がる大きな材料だ

けど、それをアイツに
マネージャーといえど部員の1人に
やらせていいものか


ホイッスルの音で
とりあえずこの考えは置いておくことにした。









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