コート上の天使

□収穫
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「もう一回!!」




この発言
もう4回目、くらいだろうか
さすがに見てるだけの私もぎょっとした。



体力お化けだよ
あんだけ人より動いてるのに



「新幹線の時間もあるんだ!」



コーチに摘まれて大人しくした日向くん



もう一回

そう言って試合したけど
勝てなかった
セットを取れなかった



音駒
確かに目立つスター選手はいないのかも
けど、バレーはコートにボールを落とさない限り負けない



ボールをコートに落とす力と
ボールをコートに落とさない力


後者が勝った
今回は完敗だ





…でも



『…かっこよかった、な』



ユニフォーム姿で戦うみんな
汗だくだけどそれも頑張った証
なにかに一生懸命な人はやっぱりいい



それに
収穫もあった
この試合は次に繋がる




余韻に浸っていたけど、気がつけば片付けが始まってた。
私も早く潔子さんと合流しよう







「よおぎょーざチャン」

『!鉄朗さん』



呼び止められ振り返れば
ニヤリ顔の主将



「今までどこいたの?」

『あぁ、上です』

「ふうん」

『あ、お疲れ様でした』

「ドウモ〜」



鉄朗さん
やっぱりなって感じだった
ミドルだけどレシーブもできる
なにより、器用
それに


『金髪プリンさんとは長いんですか?』

「え?」

『え?』


ぽかんとされてしまったので
聞き返してしまった


「なんで研磨と長いって…」

『いや、なんとなくですけど』

「なんとなくって」



うーん
ほんとうになんとなくなんだけど
そう思ったきっかけを探れば
あるシーンが浮かんだ



『Aクイックからの1人時間差、とか』



そこだけじゃないけど
慣れっていうか、
空気で会話してる みたいな



鉄朗さんはまたニヤリ顔


「ほ〜。研磨が言ってたのはぎょーざチャンだったってわけね」

『?なんの話…』

「がーって感じのセッターとバレーがめちゃくちゃ上手いマネージャーが居るらしいって研磨が」



がーって感じのセッター…
飛雄?



あ、



『日向くんから聞いたんですね、』

「そ。あのチビちゃん」



指先にはぴょんぴょん跳ねながら擬音を使いまくる日向くんが音駒の人と喋ってた



「まぁ、次はバレー楽しみにしてるよ」

『次って…試合でどうやって』

「わかんないだろー?どんな機会があるか」

『私が鉄朗さんとバレーする機会なんてないと思いますけど…』



試合にでるのはみんなだし



「つれねぇな〜」




ぐわし、と頭を掴まれ

鉄朗は監督さんの元へ向かった










「焼きさーん!」


話が終わったのか日向くんが駆け寄ってきた。

走る元気があるなんてスバラシイ



『日向くん!』

「ほぎゃあ」


私はぐっと日向くんの肩を掴んだ
そう、
私は日向くんに言いたいことがある




『すごかったよ!コースの打ち分け』

「えっ!す、すすごい?」


上からだからなんとなく、だけど
飛雄のトスが少し変わったように見えた。
緩やかになったみたいに。
トスを見だした日向くんに合わせてだと思うけど。

それでも練習してないことを試合でするなんて、




『うん。なかなか対応できるものじゃないよ。けど試合の終盤には形になってきてた!新しい武器が増えたね』

「武器…!なんかかっけぇ!」



きらん
と目が輝いた


単純


だけどその単純さが強み





『そうだよ、かっこよかった!』

「かっ…!え、かかかかっこいい…っ?!」

『うん』

「オレカッコイイ、カッコイイ…」




…何故カタコト





「…おい、満足してんじゃねぇぞ。まだ修整するところあんだからな。
それに相変わらずのクソレシーブどうにかすんぞ」



ぴしり、と空気が固まった


相変わらずなのはあなたの辛辣な言葉使いもですね



「なんで人のテンションを下げることばっか言うんですか!」

「あ?本当のことだろ」

「わかってるけど!」

「わかってねえ!」


ぎゃーぎゃーぎゃー


いつものパターン

よく喧嘩する元気が残ってるなあ、この人達





「おい、お前ら片付けたらさっさと戻るぞ!」



烏養さんが指示を出す


そうだ
音駒戦は終わった


烏養さんも今日までだ



そのために
私はデータをつけてたんだから



「あ、それとぎょーざ」

『!はい』

「お前、今日時間あるか?」

『あります、けど』

「練習終わったら店寄ってけ」




やたら真面目な顔で言われた


なんだろう…

何か大事なこと…?



「大事な話だ
今後の戦略についてのな」




…今後?


色々疑問があるが
あえてここでは聞かないことにした
とにかく
練習後に真面目な話があるらしい





「よし。学校戻るぞー!」




大地さんの声に続いて
ぞろぞろと学校に戻ったのだった。









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