コート上の天使

□気持ちの自覚
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昼飯食い終わってもなお昼休みはたっぷり残ってる。


窓から入ってくる太陽の光が眠気を誘う。



…寝るか



腕を枕にして机に突っ伏した




「デートするんでしょ?」

「そうだよ、何着ればいいかわかんない!」



…女子ってこういう話好きだよな



「いーな、デート。私も行きたい」

「いいよねぇ、映画だっけ?定番だけどやっぱ羨ましい」

「緊張して内容入ってこなさそう」




教室の雑音をBGMに微睡んできた




「あ、ぎょーざと月島君」




反射的に目が開いた



「ほんとだ。珍しいね月島君が女子と話してるの」

「ね。カッコイイんだけど話しかけにくいもんね」




顔を上げてドア付近に目をやれば

ぎょーざ と月島

カッコイイって、月島がか…?
むかつく顔以外ねぇだろ



「なんかお似合いじゃない?」

「わかる。月島君背高いしぎょーざは可愛いし。」



はあ…?
お似合い?

ふざけんな、似合ってたまるか
月島とぎょーざとか似合わねえし
絶対



未だに会話してる2人

なんか見たくなくて顔をまた突っ伏した

でも全然眠くねぇ





「でもぎょーざちゃん先輩と付き合ってるんだよね」



ぴしり


頭のどっかが軋んだ





「あー3年生だよね。バレー部の」



バレー部?!
3年生?!

誰だよ聞いてない
絶対嘘だ



「背はそんなに高くないけど、優しそうな人だよね。ぎょーざも楽しそうだったし」



東峰さんじゃない
二択だ
どっち…



「泣きぼくろはズルイよねー」




菅原さんんんん…っ!!

いや、菅原さんに限って…
でも最近仲良いし


これ、あり得るのか…?



つうか
なんで俺、こんな焦って…

別にぎょーざと菅原さんが付き合っても

別に…
…べつに、





「違うよ、焼きさん他校の先輩と付き合ってるんだから」


他校
思い当たる節があって

なんか、もう
聞きたくない



「超イケメンだった」

「へぇ!いいじゃん!」

「なんだっけ、名前…」

「あっ聞いたことあるわ!バレー部の人!」



バレー部の人、

最悪な気分だ

もうその先を聞かなくたって



「そうそう、及川さんだ!」




一気に椅子を引いて立ち上がってた。

廊下を全力疾走

驚いてみんなに道をあけられる



いつの日かぎょーざと廊下を走ったことを思い出して、余計に思考がぐちゃぐちゃとした。





「はあ…っはあ、…っクソ」



気がつけばいつも来る自販機がある中庭


膝の力が抜けて座り込んだ





なんだ
なんなんだよ


最近変だ俺

こんなこと、なんで…





音駒の主将と話してるところ、見てられなかった


今だって…





俺の知らないところでぎょーざが出来上がって

俺の知らないぎょーざが他の人に知られていく




「っクソ…くそ、」





別にいいだろ、
菅原さんと付き合ってようが


及川さんと、
付き合ってようが…
べつに、





…よく、ない


嫌だ、


手、とか 繋いでるとか
ぎょーざが他の誰かを思ってるとか
考えたくない

…特に及川さん




なんだよ、
嫌なんじゃんかよ


何が、別に だよ…俺、






『…何してんの』


タイミング良すぎる声に
抱えた頭を上げた



「ぎょーざ、」


目の前にしゃがんでたぎょーざ


「ち、近…!」



近すぎる距離にびびって思わずのけぞった



『だって気づかないんだもん。

何してんの?こんなとこで。瞑想?』


「あ、いや…」


『もう、学ラン汚れてるよ』



くっと手首を掴んで、腕の砂を払ってくれた

ぼうっとしてた
けど、手 掴まれてる

尋常じゃないくらい手首が熱くなった




「ばっ…バカ手、!」

『はあ?だって、汚いんだもん』

「そうじゃない…!」

『えー、なに』



いつもみたいにうまく流される
クソ、人の気も知らないで…!





でも、
やっぱり
間違ってなかった



俺は嫌なんだ
他の誰かのぎょーざになるのは



悔しいけど
こうやって世話焼かれんのも本当は嫌じゃない、むしろ…



『どうした?急に黙って』

「…やめろよ、」

『え?』

「ほ、他の奴に…こうやって、世話焼いたりするのやめろよ」

『うん?』



きょとん顔のぎょーざ
くそ、もうなんだよ



「無駄に愛想振りまくな…俺だけかまえ!」



ぱちり
と目を丸くしてるぎょーざと目が合った

菅原さんのあの言葉を思い出す

ガツガツ、いった かも、





『ふふ、なに?甘えたい気分なのかなー、飛雄ちゃんは』

「っ飛雄ちゃん言うな!子供あつかいもやめろ!」

『はいはい、わかった。』



ふさふさと優しく頭を撫でられた
完全子ども扱いだ

それでも
じわり、となにかが広がってく気持ちになる。



いつも通りなぎょーざ
俺はこんなにドタバタしてんのに、




拳を握って
聞いてみた



「…菅原さんとつ、付き合ってんの、か?」

『え、スガさん?やだ、付き合ってないよう』



なにその噂ー!
そんなのスガさんに失礼でしょ


笑うぎょーざ

なんだ…違った、




「…及川さん」

『え、及川さん?』

「及川さん、は?」

『付き合ってないけど?』


胸に溜まった何かを吐き出すようにため息をついた



『え?』

「クラスの女子が…お前と及川さん付き合ってるって」

『えぇ、そうなの?』



女の子好きねーそういう話
困ったように笑う


俺もそう思う
振り回されて疲れた



『なに、そんなことで瞑想してたの?』


俺の顔を覗き込む



あぁ、そうだよ
つまんねー噂話に振り回されて
本気で焦ってたんだよ


でも
手を伸ばしたらそこに居る

誰のものでもないぎょーざが




『飛雄?』


薄い肩を引き寄せて、抱きしめた



『え、ちょ、ちょっと…』


息を吸い込めば、
甘くて、優しいにおいがした

あぁ、ぎょーざのにおいだなって




触られると
困る 。
手汗かくし、心臓おかしくなる



なのに
触りたいって思うのは

誰かに取られたくないって思うのは








これが
好き、ってことなのか?







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