コート上の天使

□青春
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青春だ


自分の身に起こったことが漫画のようで、

青春だ…!

なんて感動させられた。



うちのマネージャーによって。



大弾幕の

飛べ

の一言もすごく胸が熱くなった

けど
頑張れ の一言は目の奥を熱くさせた。


3年目だけど、
言葉にしてくれたのって多分初めてだ。

それくらい清水も期待してくれてるってことだ。




そして
もう1人のマネージャーによって二度驚かされた




「うわあ!すげえ!何コレ!!」


絶賛感動中の日向

バッグについたユニフォーム型の小さなマスコット
黒地にオレンジの模様 白のナンバー

紛れもなく俺達が着るユニフォーム


部室に戻るとみんなのバッグに最初からついてあったかのように
さり気なく増えていた。



「すごいなこれ、一人ひとりナンバー違うのか」

「うわ細かっ」



俺のカバンにも2番がついていた。



ダッシュで部室から出ていくぎょーざちゃんを偶然見かけていた俺はこのマスコットの生みの親がわかっちゃってたけど。

気づいてるのは俺くらいと思う。


みんながいないところで付けて先に帰るなんて らいしいっちゃらしいけどな



それにしても、俺らとほぼ同じくらい練習に参加して、ノートも書いてくれて疲れてるはずなのにいつこんなもの作ってくれたんだろう。



「すげーっすげーな影山!」

「…おう」

「清水先輩が作ってくれたのかな?」


「いや、たぶんぎょーざ」

「焼きさん?!」



あ、
気づいてる奴もう1人いたわ




「なんで?なんでわかんの?」

「あそこ、」



影山が指さす先にはホワイトボード



右下の方に



勝ちましょう



「あれ、アイツの字だ」



またマスコットに視線を落とした影山
なんだか嬉しそうだ



「よし、肉まん奢ってやるぞ」

「大地さんあざーッス!!」






ぞろぞろと坂ノ下へ向かう。


ちゃんと前向けよーなんて注意しながら。

日向の肉まんの歌が聞こえる
でも一向にツッコミが入らない。



うっせぇ日向ボケェ!

…みたいな



あれ、もしかして置いてきた?

ぐるっと見渡せば意外と俺の近くに歩いてた。

手の中でマスコットをいじりながら明後日のほうを見てる。




まったく、


「お前ほんとぎょーざちゃん好きな〜」


びくりと肩を揺らして振り返った顔は言っちゃ悪いけどマヌケ面



あら、
俺もしかして やらかした?


と思ったのと同時に
マヌケ面から険しい顔に



これまたいつもと違う反応だ




「…そういう菅原さんはどうなんスか、」



地響きみたいなひっっくい声



「へ、?」


「ぎょーざのこと、どう思ってるんですか…!」


「どうって、」



そうだなあ

頭の裏にぎょーざちゃんを浮かべてみる




気が利くいい子
一生懸命だし
でも頑張ってます!って感じを出さない
大人だなーって思うけど
やっぱり年相応に見えることもあって
しっかりしてるんだけど
なんとなく守ってあげたくなるような



「不思議な子だよな」


よくもこんなぺらぺらと出てきたなってくらい淀みなく口が動いた



影山は
この世の終わりみたいな顔をしてる



「おい大丈夫」

か?

をいう前に



「俺…!負けませんからっ!」


あ、聞き覚えのある台詞だ
なんて思ってたら
旋風のように駆け抜けていった影山。


「影山?!」


呼びかけても時既に遅し
道の彼方へ小さくなっていった。



「菅原さん、今のガチのやつですか…?」



縁下が恐る恐るといったように訊ねる。


「うーんそうだな、

85パーはガチ、残りは…いじめ心?」




ん?
なんか逆にこじらせた?



「勘違い、させちゃったかな」

「たぶん、」




…いやあ、
青春だ

青春




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