コート上の天使
□気づかない
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「ぎょーざちゃん！」
『スガさん！』
呼び止めればパッと笑顔を見せた
通りすがったやつが可愛い、と呟いたのが聞こえた。
俺もそう思う。
『お疲れ様です』
「そっちこそ。ナンパされなかった？」
軽いノリで聞いたら
乾いた笑いで返された。
うん、されたんだな
「大丈夫だった？」
『伊達工の人が助けてくれて、』
「伊達工？！」
なんでよりによって伊達工？！
『なんかかっこよかったです』
「え、」
ちょっと待て
ナンパされた所を助けてもらって
かっこよかったです？
…影山には知られないことを祈ろう
『あとエースによろしくって』
「うわあ…」
今朝のことを思い出して旭が気の毒になった。
『すごいですね、あさひさん』
「え？」
『強豪に警戒されてますよ』
すごい、か…？
なめられてるんじゃなくて…？
『普通負かした相手なんてどうでもいいものですよ。それなのにエースによろしくって。
覚えられてる証拠じゃないですか』
目からウロコ
そういう考え方もあるんだ…
「それ、本人に言ってやって」
『？はい』
なんでもないように
でも、他人を励ましたり
フォローしたり
できる子だよ、本当に
『他の皆さんは？』
「あ、あぁ…みんな思い思いアップとったりストレッチしてるよ」
『大地さんと烏養さんにとりあえず報告したくて、』
「あ、大地ならこっち」
一緒行く、と言えば
ありがとうございます、と横を歩く
荷物持つよって言ったら断わられたけど
「あ、そういえば、影山には会った？」
『？いえ、会ってませんけど』
ぽかん、とした表情と
さっきの影山の様子が対称的すぎて
「試合終わってからきょろきょろ、そわそわしてたからさ、アイツ。」
『しょうがない子ですね、まったく』
子、って言われてるところが
アイツも報われないなぁ
「影山にとってはぎょーざちゃんは特別なんだよ」
何の気なしに言ったら静かになってしまった。
あれ、地雷踏んだ？
『…飛雄はたぶん気づいてないだけなんです』
「気づいてない？」
『中学の時、あんなだったからまともに会話できる人が限られてて…』
静かな調子で話すぎょーざちゃん
影山からは聞いたことあるけど、
ぎょーざちゃんが影山のこと話すの珍しいかも、
『たぶん中学の癖が今も抜けないだけなんです。
飛雄を理解してくれるのは私だけじゃなくてたくさん居るのに、』
口ではわかってるって言っても、
本当の意味ではまだ気づいてないんです
『私が居なくても、飛雄をみんなわかってくれてるのにって』
「そう…かな、」
『え？』
「んーん、なんでもない」
俺には
そうは思えないような気がする
中学の時はぎょーざちゃんが思ってる様な関係だったかもしれないけど、
少なくとも今は
影山はそんなふうに思ってないんじゃないの？
じゃなきゃ
俺に煽られて
ぎょーざのことどう思ってるんですか、なんて言わないよ。
もどかしいだろうな、影山
いつもはなんでも察してくれる1番の理解者が
肝心な気持ちはくみ取ってくれないなんてさ。
気づいてない
ってのはお互い様、なのかも。
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