コート上の天使
□噂と本物
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「見た？北一の天使」
「見た見た！すれ違ったら超いい匂いした」
おぉぉ…！
これで何回目だ？
会場中で噂になってる
焼きさん有名人だ…！
「ねぇ、焼きさんマネやってるんだって」
「えー！上手かったのに辞めちゃったんだバレー」
男子だけじゃなくて女の子も噂してる…！
って、焼きさんバレー辞めてねーし！
俺らとやってるし！
「なんか、勿体ないね」
ちょっとカチン、ときた
今マネージャーやってるのが間違い、みたいな言い方
うまく言えないけど…
モヤぁとした気分だ
でも
焼きさん、本当はどうなんだろう？
女バレに入ればよかったとか思ったことないのかな？
俺は焼きさん居てくれてほんっとよかったって思ってるし、教えてもらえてすごく為になってる。試合に出るの超楽しい！
でも焼きさんは試合出たいとか、思わないのかな…？
「あ…」
焼きさんだ…！
みんな振り返ってる
こうやって見るとやっぱりすげぇキレイだなー
なんてっ
俺なに考えてんのぉぉ？！
ぐわぁっと顔が熱くなったのを抑えた。
「焼きさんっ！」
『！日向くん』
呼び止めれば
振り向いて笑ってくれた
「よかった！試合の前に会えた！」
『もうすぐだね、次の試合』
アナリスト、？
だっけ…
朝聞いた時はなんのことか全然わかんなかったけど
先輩に聞いたら教えてくれた。
プレーのデータを取るって
俺には全然わからないけど、勝つためにやってくれてるんだって、コーチが言ってた。
「なあ、データってどんなの？！」
『うーん、例えば誰がサーブレシーブ下手くそか…とか？』
「えっ！！そんなことも？！」
『そう。だからサーブで10番を狙おう、って作戦たてる材料になるってわけ』
10番…？
って俺？？
「俺サーブレシーブ下手くそ、」
『やだなぁ、例えばの話っ』
にこにこ笑いながら結構
こう、抉るようなこと言うんだよなぁ…
「で、でも、それすげぇ！それをヒントにやれば勝てるってことでしょ？」
『ヒント、うん。そうかも。
ただ、やるのはみんな。コートに立ってやってみないとわからないことだっていっぱいあるんだから』
期待してるよ、最強の囮
とんっと肩に重みがかかった。
さっき抑えたぐわあってやつがまた復活してきた。
「は、はひぃっ！」
『じゃあ、場所とりだけ先にしてくる。試合始まるまでは皆の試合見てるから！』
「ほ、ほんと！？」
『うん。楽しみにしてる！』
じゃあ、
と手を振って別れかけたところで
思い出したことがあった
「あっ！影山が焼きさんに会いたがってた！」
『知ってるー！』
そのまま行っちゃった
あれ？知ってるって言ってたけど
なんで？
あ、やべ！
戻らないと怒られる
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