コート上の天使

□こだわりと頑固
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がたがたと揺れる座席
さっきまで騒がしかった車内は
今では寝息、エンジン音、

そしてパソコンのキーを叩く音だけ



「静かですねえ」

「ああ、二試合やったしな。どっちもストレートで勝ったからまだマシだけどな」



これからは相手ももっと強くなる
気を引き締めてかねーと


喋らなければ車内は寝息、エンジン音、そしてパソコンのキーを叩く音



「おい、お前もちょっとは休めよ?」


ノートパソコンに齧り付く勢いで打ち込みをしてるぎょーざ

ただ、
こいつの働きには本当に助けられた



『でも、帰ったらミーティングですよね?だったら今まとめちゃわないと皆に見せれないです』


まじめ、っていうか
頑固っていうか

自分で決めたらそうするからな、コイツは




「ったく、お前は」

「でも大活躍でしたね!焼きさんのデータ」



まるで予言の書みたいでした
と先生



予言の書、か
わからなくもないが



『やだなあ、予言なんてすごい物じゃないですよ。それに、』




笑ったかと思えば
声のトーンが落ちたのがわかった



『青城は柔軟性が恐ろしく高いチームです。明日は私のデータなんてゴミくずみたいでしょうね』

「ごっゴミくず…」

「…その割には必死じゃねぇか」


『これが役に立つかって言うと立たないかもしれない。でも無いよりかはいいかなぁって』


戦うのは彼らだし


ぽそっと最後に零した

それが妙に引っかかる

本音が込められてる気がして



「お前さ、」

『あー…なんか気持ち悪くなってきたー』


「えっ!だ、大丈夫ですか?!」

「バカ!画面見すぎだ!外見ろ外!」

「もうすぐそこですから!」



画面から顔を逸らし、窓を見るぎょーざ

薄く笑っていた


また上手く話を躱された気がしたのはただの思い違いか




「はい、着きました!」



寝てる奴ら皆を起こしにかかる

ちんたらしていたくせにテレビにでてる、と職員室の先生に言われれば光の速さで飛んで行った。




「単純だな、アイツら」

『いいじゃないですか、勝ったんだし』

「お前行かなくていいのか?」

『あともうちょっとなんで、コレ』



またパソコンのキーを叩く音



『レセプション、』

「あ?」

『今日と変えたほうがいいかも、ですね』


画面にはサーブの決定率
青城1番

及川だ



「…だな」


『よし、終わったあ』


ぐーっと天に腕を伸ばした


「お前はどう思う」

『どうって…?』

「明日」


勝てると思うか?


少し黙って口を開いた



『青城、すごく強かった』

「あぁ、」


『その青城に明日勝つ、んですよね?』


勝てる勝てないの前に勝つ。
少なくとも皆はそう思ってます



『私達が迷ってどーするんですか、コーチ』



コーチなんていつもは言わないくせに
最後ふざけやがって


ほんと、コイツ高1かよ
精神年齢俺より上じゃねぇの?



いつも上手いように丸め込まれている影山の心境がなんとなくわかる気がした

















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